先代巫女(智霊奇伝)の生存戦略

幻覚度 5

博麗大結界は博麗の生存戦略でもあった

智霊奇伝を読んでいて先代巫女の選択が博麗の生存戦略として最適だったと思ったのでメモ。

妖怪がいなければ妖怪退治も必要ない

妖怪の力が薄れ幻想郷が崩壊しかけていたあの時期に、大結界という手段に飛びついた反射神経、優れた生存戦略。

求聞史記によると

八代目の阿弥の時代、幻想郷は妖怪の力が薄れ、外の人間も妖怪を否定し、既に崩壊寸前だった。 
そこで妖怪の賢者が取った策とは、大結界により幻想郷を隔離すると言う物だったのだ。

『東方求聞史記』153ページ

とのこと。

大結界を作らなければやがては妖怪は消滅し、博麗や宮出口のように妖怪退治を生業とするものは生きる術を失っていただろう。

今更別の生き方を探すのも難しいだろうし、何よりも脅威となる妖怪がいないのであればその妖怪を倒す力を持った個人こそが、社会にとっての潜在的な脅威となる。

狡兎死して走狗烹らる。

先代にはそれが見えていたから「妖怪の賢者が取った策、大結界」に乗ったのだろう。
瑞霊にはそれが見えていなかったから、なぜ博麗が大結界に賛同したのか理解できなかったのだろう。

博麗は特別だったのではなく特別になった

大結界が博麗である必然性はなかった

先代巫女の生存戦略の優れているところはもう一つある。
大結界はただの大結界ではなく「博麗大結界」なのだ。
「妖怪の賢者が取った策」としての大結界がなぜ博麗大結界なのか。

三月精によると
博麗神社の周りの木々は大結界の境界に位置していて、何らかの理由でその木が消滅してしまうとそこに外の世界が入り込んでしまうらしい。

神社の周りの木は魔法の森のような生命力に溢れたものではない(中略)
どうもわざと後から植えた感じがするわ(中略)
どこから境内なのかをはっきりさせるためなんじゃないかと思うの

『東方三月精 〜 Strange and Bright Nature Deity(3)』122、123ページ

境界であった木が裂けてしまったから境内は一度小さくなり
そこを埋めるように外の世界の木が割り込んでき

『東方三月精 〜 Strange and Bright Nature Deity(3)』127ページ

博麗神社の周囲の木々は博麗神社の境内をはっきりさせるために植えられた。大結界の境界上に位置している。

結界が作られてからわずか130年で(2014年の華扇ちゃんのセリフに準拠して130年としたが、もはやサザエさん時空なので細かい数字は意味をなさないだろう)大木にまで成長しているのは妖精のおかげなのかもしれないが、重要なのはこれらの木々が後から植えられたこと。

大結界が作られる前から博麗神社やその周辺が特別だったわけではなく、大結界を作るにあたって整備されて特別になった、が正解に見える。

博麗大結界があるから博麗は特別

求聞史記によると

博麗の巫女は、博麗大結界を管理し、幻想郷を見守っている。大結界が内からでも外からでも崩壊すれば、幻想郷は無事では済まされないだろう。幻想郷そのものが今の形を維持するには、博麗神社とその巫女が必要である。その為、巫女に逆らえる妖怪はいない。

『東方求聞史記』112ページ

とのこと。

巫女に逆らえる妖怪がいないのは単に巫女だからということではなく「大結界の維持に必要な巫女だから」。
博麗が特別だから博麗大結界があるのではなく
博麗大結界があるから、博麗は特別なのだ。

もう一つ注目すべきは博麗の巫女は博麗大結界を管理しているということ。

実際には三月精でも茨歌仙でも、霊夢は博麗大結界の構造もその成り立ちも理解していなかった。
理解していないが「結界を緩めたら紫を呼び出すことができる」と言っているため、大結界の管理ができるというのはある程度事実だろう。
少なくとも緩めたり元に戻したりはできるらしい。

先代巫女の生存戦略・経営センス

博麗大結界を作った中心人物は紫でほぼ間違いない。
大結界を作るにあたって、どこに境界線を引くのかというのは設計上重要なことだったはず。
人が作った明確な県境とか村境はなく、ふんわりとこのあたりが幻想郷、という状態のほうが幻想郷らしい。
しかし大結界を作るということは境界を作ってしまうことになる。この境界で区切ったところが幻想郷です、と明確な線引きをすることになる。

紫は自分の家を大結界の艮の境界とした。
そして博麗神社もまた、境界上に位置する。

大結果にとって重要なのは博麗神社ではなくその周りの木々であり、これらは大結界を作るにあたって後から植えられたものだ。
元々大結界の境界に相応しかったわけではない。つまり博麗神社が境界上にある必然はない。
誰かが紫に(他の賢者にも?)アピールしたのだ、博麗神社を境界にしましょう、と。

先代巫女である(みーこっこっこ)

彼女の生存戦略の優れているところはここにある。
「妖怪が消える=妖怪退治屋の存在意義がなくなる」
ことを防ぐために大結界に賛同する。ここまでならできる人は他にもいただろう。さらに一歩踏み込んでその大結界のキーパーツに博麗を捩じ込む。これが博麗を特別なものとした。
どんなプレゼンをしたのかはわからない。
わかっているのは大結界は博麗大結界として完成したこと。

博麗は他の妖怪退治屋とは一線を画す存在となった。大結界の管理まで行える。幻想郷の生命線を握っているのだ、人間が。
博麗大結界成立前は、数多いる妖怪退治屋の一派に過ぎなかった博麗は、博麗大結界の成立とともに、幻想郷の維持のために不可欠な存在にまでなった。

ピンチをチャンスに。
需要を生み出せ。
ルールを作る側に回れ。
まるで経営戦略だ。

先代巫女である。(シャン……)

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