反妖怪主義の秘密結社について
人間の里で存在が噂されている秘密結社がある。その結社は幻想郷に住んでいた人間と妖怪の跡を調べ、幻想郷の秘密を解き明かそうとする集団だ。妖怪の活動範囲をも調べる事から、その活動は熾烈を極め死者も出ることがあると言う。
今回はついにその秘密結社のリーダーと名乗る人物と接触することが出来た。
秘密結社のリーダー甲さん(偽名)によると、結社を決意した理由はこうである。今の人間達は、なぜ妖怪の住む此処で暮らしているのか、そもそも幻想郷とは何なのか、先祖は一体どういう人間だったのか、と言うことを殆ど知らない。恐らく全てを知っている妖怪達を幻想郷から追い出して幻想郷を人間の物にするには、まず幻想郷の真実を知る必要があるのだ、という。
随分と自分勝手で人間らしい意見だったが、私を含む多くの妖怪達はこれを相手にしていなく傍観している。
東方文花帖、54ページ
反妖怪主義の秘密結社はご覧のように妖怪の住処をも調査するため死者を出している。そして妖怪たちには相手にされていない。
これを単純なマックス・ウェーバー的な脱魔術化と評することも可能だ。幻想郷の存立構造を破壊しかねない行為にも関わらず警戒されていない。
私は敢えて違うアプローチで考察していきたい。
もはや……
はっきり言ってこのような活動方針は自爆でしかない。過激的な行動は身を滅ぼすと皆さんがご存じのようにそのような方針は支持を集めないのだ。何故わざわざそのような行動をするのか。
シンプルに行こう。組織の指導者もしくは中枢が当局側のスパイに乗っ取られていてわざと過激的な方針にして自滅を図っているという説だ。
少しばかりこちらの世界のお話をしよう。
かつてロシア帝国にオフラーナという秘密警察のような組織があった。そのオフラーナにあるスパイがいた。それがエヴノ・アゼフである。
調べてもらえれば分かるが彼は社会革命党の要人暗殺組織、社会革命党戦闘団の指導者として数々の要人の暗殺に関与した。
何故彼の話をしたのか。それはわざと過激的な方針を掲げ実行に移すことで組織の自滅を図ろうとした人物だからである。
勿論当時のロシア帝国と幻想郷の状況はまるで違うし本当に自滅を図ろうとしたかなんて実際の所よく分からないし私の想像に過ぎないのだ。しかし組織の指導者がスパイであったという代表的な事例として挙げておきたかった。
日本にもとあるスパイがいるが……この話はここではやめておこう。
さて話を戻すが過激的な方針にして自滅を図る、勿論それ以外にも考えられる理由はある。
それは当局による摘発の理由を作ることである。
穏健派を追い出し過激派だけを集めることになるこの方針はさらなる過激的な行為に身を走らせることに繫がるので摘発の理由づくりにもなり得るのだ。
そして人里の世論を反妖怪主義から遠ざける為でもある。はっきり言ってこんな思想、幻想郷ではウケが悪い。だからこそ自滅的になり過激的になり嫌われに行くのだ。

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