駒草山如の背景に迫る②〜なぜ依姫と似ているのか〜

幻覚度5

先に述べておくと、依姫と山如の明確な関係は見出せなかった。

ただ、2人の奇妙な類似性がいくつか浮かび上がってきたので、それを共有したい。

その前に山如に対する誤解をいくつか解いておきたい。

 

 

「女郎」「太夫」はミスリード

山如はまたの名を「駒草太夫」と称する山女郎のキャラクターであり、若干の猥雑なイメージを抱く事も少なくはないだろう。

しかし女郎、太夫について調べてみると、元々は遊女とは違う意味の言葉だったのがわかる。

女郎は「上﨟(じょうろう)」が変化した言葉とされ、高貴な女性を意味していた。

太夫に関してはさらに「神職」「芸能」に関わる言葉だったとされる。

 

山如は太夫で女郎だが、遊女とは言ってなかったはずである。

仮に遊女だとしても、一般人では手を出せない格式高い「太夫」を名乗っている時点で普通の娼婦ではないだろう。

山姥と別で山女郎である事にも、特別な意味があるからではと考える。

 

 

賭博

賭博は下賤な遊技のイメージがあるが、香霖堂などでの霊夢や酔蝶華の神子がそうしたように、東方においては運を見極めるキャラクターの神秘性を示す役割がある。

賭博を司る山如に特別性を匂わせているのも、山如が神事に関わる存在だったならば不思議な事ではない。

 

 

身売り

遊女ではないとは断言できないが、けしからん格好をしたり艶やかなイメージがある事から、遊女のイメージも内包しているかもしれない。

ただこの遊女から想像する「身売り」に関しては、別の意味でそれこそミスリードとして付与していると考える。

 

全国各地では田を守るために水害を鎮める儀式として、人身御供が行われてきた。

人身御供を単に身売りと呼ぶこともあり、つまり「神に身体を捧げる」という意味である。

実はこの「身売り」こそが山如と依姫を繋げる重要な部分であり、

日本神話では玉依姫はまるで単一の神のような書かれ方をされているが、民間の信仰では、神に身を捧げる女性を総称して「玉依姫」と呼んでいたとされる。

そもそも日本神話の玉依姫の体を取っている依姫が憑座の能力を持っている時点で、この民間信仰を採用しているのがわかる。

神の伴侶、親子として神話として後世に名が残される。日本神話の玉依姫、豊玉姫はこの流れを汲んでいる可能性があるかもしれない。

 

 

山如は下賤なイメージに隠された、巫女としての神秘性を内包していると思われる。

 

 

旅人の拝む神-松浦佐用媛-

人身御供の伝説でいうと欠かせないのが松浦佐用媛である。

混同や変化もありながら、全国に伝説を持ってその名が知られている。

万葉集にも題材として挙げられ、能の題目にもなっており、また、その名を掲げた神社も複数存在し、古くから信仰の対象となっているのが伺える。

伝承は様々な形になっているけれども、名前や「水」に関するという部分はほぼその形を保っている。

水の神(蛇)の贄として捧げられた、悲恋の果てにその身を池に投げた、小舟で海の向こうから命尽きた姿で流れ着き埋葬され祀られた、など。

悲しい話だけではない。

長者の愛娘の代わりに人身御供として蛇神に供され、または怨念の果てに蛇と化した女性に喰われようとしたところ、さよ媛の唱えるお経にて蛇は得脱、元の姿に戻る、といった伝説もあり、また、人柱として沈められたが神の思し召しにより蘇ったという話もあり、神秘的な存在である事も伺わせる。

一方で、東海道を旅する父娘2人の旅人が吉原に泊まった際、娘が富士の池に贄として取られ父はそれを嘆き悲しむ。その文句に「まるで松浦佐用媛のようだ」と例えた歌もある。

父娘の旅人の話は各地にあり、やはり似たような形態を取っており、道端、坂の辻の石の神の由来として語られている。

つまりは道祖神の由来を説いた伝説であり、佐用媛の「さよ」とは「道祖(さえ)」から来ているという推測がある。

旅をした親子共々人柱にしたり、旅人であるはずの余所者が水害に悩む村人へ人柱を立てる事を提案し、自ら名乗り出る、という話がある。

また、海から流れ着くものを祀る話も旅人と同じことで、村や島の民からすれば「異界から助けに来た神」として祀られたのでは、と推測されている。

 

因みにこの、『海から流れ着きそれを祀る』というのは、玉依姫にも同様の伝承がある。

海から流れ着いた佐用媛を葬ったところたちまち豊漁が続き、後に社を立てて祀った。玉依姫に関しては、この遺体が「不思議な光る石」に変わっただけでほぼ同じ内容となっている。

 

何故こうも全国に似たような話があるかというと、田と水の悩みはどの地域でも同じであり、神事の際に伝承や神話を再現する事がしばしばある。この時の再現が芸能として、その話が民の心に刺さり全国に広まったとされる。

全国を旅し、芸能をしたのがその「佐用媛」だとされる。

 

水の神と言えば蛇であり、龍でもある。海神の子である豊玉姫、玉依姫。

ムーンドラゴンの豊姫、スモーキングドラゴンの山如。

山如は自らを水の神に関わる存在だと示しているように見えなくもない。

蛇の話が頻出する酔蝶華にて、準レギュラーとして活躍しているのも偶然ではないと思っている。

 

 

終わりに

山如と依姫の関係について流石に結論は出せないが、奇妙な類似性がある事から見た目が似ているのは偶然ではないという事が推測でき、その類似性をどうしても伝えたかった。

 

余談だが、佐用媛について調べてみると、どうも奇稲田姫や小野小町とも関係があるらしく、東方要素が沢山見受けられる。

また、秋姉妹が姉妹である所以についても一定の考察ができそうだ。

 

 

 

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