小説版『儚月抄』の第一話に「鈴仙もその昔、地上に逃げてきた時は月の羽衣を使用したらしい」とあるので、月→地上の移動手段は月の羽衣です。
幻想郷に入った方法は「人間以外が住む幻想郷の噂を聞きつけ、なんとか入り込んできた」とのことで(『永夜抄』キャラ設定テキスト)、具体的な方法は不明です。
鈴仙が綿月姉妹の元から逃げ出したのが「四十年以上前」(『儚月抄』第三話)、てゐが初めて鈴仙を発見したのが「三十年くらい前の満月の夜」(『儚月抄』第一話)なので、鈴仙が月の都を脱走してから幻想郷の迷いの竹林(永遠亭)に辿りつくまでおよそ十年の空白があることになりますが、この間の行動も不明です。
①月で十年間潜伏→羽衣で幻想郷に直接降下
②羽衣で幻想郷に直接降下し十年間潜伏→迷いの竹林に偶然侵入
③羽衣で外の世界に降下し数年間潜伏→幻想郷の噂を聞いて侵入
などの経緯が考えられますね(羽衣は「満月と地上を繋ぐ乗り物」ですが、てゐが鈴仙を発見した日も満月なので①は成立します)。
本題の「幻想郷の結界の効果で月の使者は侵入できない」ですが、正直解釈が難しいです。
そもそも「月の使者が侵入できない」という紫の説明の根拠が不明で、常識の結界である博麗大結界がなぜ月の使者を拒絶するのかよくわかっていません。事実、儚月抄ではレイセンが月の羽衣を使って幻想郷に直接降下したほか、月の使者のリーダーである綿月豊姫も幻想郷と月の都を難無く行き来しており、「月の使者が侵入できない」という条件自体が機能していないと言わざるをえません。
これは儚月抄の連載に伴い突貫的な設定追加を行った弊害ではないかと思っていますが、どうにか辻褄の合う設定を探ってみるのも面白いと思いますし、本当に複雑な条件が存在するのかもしれません。今回はそこまでは踏み込みません。
逆に言えば、永夜抄単体の時点では設定の混乱があった可能性も低く、鈴仙が結界を突破できたことは特に矛盾ではなかったのだろうと考えます。
幻想郷には往来を阻む結界のほかに外の世界の妖怪を呼び込む結界があるので、③の場合の鈴仙などは「外の世界の妖怪」として通常のプロセスで入場できる気がしますし、「なんとか入り込んできた」の〝なんとか〟に語られぬ苦労があったのかもしれません。
結論としては「断定不能」に落ち着きます。しかし判断材料がまったく無いというわけではないので、各々が妥当と思える解釈を見つけるのが良いと思います。