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鈴奈庵の怨霊となった娘の幽霊の話で、封印と成仏について後者の方を退治と認識した発言がありました
これは必ずしも「怨霊の成仏」=「怨霊の退治」ではないと考えています。
鈴奈庵第二十五話『著者不明は容易く盗まれる』後編において、霊夢は怨霊もしくは怨霊以前の妖怪となった易者を退治しています。
「妖怪なら問答無用で退治する」と霊夢が述べている通り、易者を打ち割った行為は「退治」と考えられます。
これに加えて、霊夢は易者復活の条件となった易書を焼却処分しています。
これは、易書が残存した場合、発動条件によって易者ないしは同種の存在が復活しうるということです。
このことから、「妖怪・怨霊の退治」は妖精における「一回休み」程度の位置づけと考えられます。
加えて、智霊奇伝 第六章第十三話での「調伏した」に「ころした」のルビが振られている点を考えます。
この点から、「妖怪への調伏」=「妖怪へのころし」であり、妖怪に対してのこれは「一回休み」程度のものと考えれば、瑞霊が実際に復活していることと整合的です。
このため、「怨霊の退治」とは別に、復活の縁(よすが)となりうるものを破壊することで、「怨霊をこの世から絶縁する」行為が存在すると考えられます。
この、「怨霊をこの世から絶縁する」行為を霊夢は「怨霊に対する成仏」と呼んでいると考えます。
(もっともこれは霊夢の視点からの成仏であって、当事者の視点から見ても成仏であるかは別の話になります)
これを踏まえて、鈴奈庵第十六話・十七話『曰く付きの艶書』前編・後編での艶書の幽霊ないしは怨霊について考えます。
幽霊や怨霊についての「封印」とは、存在を何らかの媒体に封じ込めることです。(例えば、霊夢の夢想封印や天狗の妖怪カメラも同様です)
艶書の件においては、艶書が封印の媒体となっていました。
妖怪僧侶は幽霊を艶書に封じ込めることが出来ました。幽霊は隔離されたままの時間経過によって存在を還元され、結果として怨霊化したのでしょう。
小鈴が艶書を手にした時点では、既に艶書の幽霊は艶書の怨霊となっています。
この時点で、霊夢の選択肢は以下四通りでした。
①艶書に怨霊を封印(再封印)する
②艶書に怨霊を封印(再封印)し艶書を焼却して絶縁する
③怨霊を退治する
④怨霊を退治し艶書を焼却して絶縁する
この中で、②④は小鈴が艶書の焼却を拒否したため選択できませんでした。この時点で「怨霊を成仏・絶縁する」ことは不可能となっています。
残る①③のうち、霊夢は①を選択しました。
これは、「不憫な娘の霊への配慮」と「退治したところで艶書が残存する以上復活しうるため」の二点が理由と考えられます。
花映塚では「霊の迷いを斬る」ということが成仏に当たると説明されていました。
不憫な娘の霊がいまだ幽霊であったならば、執着・迷いの対象である艶書を焼却することで、成仏ないしはこの世界との絶縁が可能であったでしょう。
一度怨霊になってしまった者とって成仏は封印よりも絶対的に不幸なことになるのでしょうか。
怨霊の側から見て、成仏は必ずしも不幸であるわけではないと考えます。
一方で、瑞霊の件についていえば、「次こそは必ず」との意志を有しており、この世界から絶縁されることで次の機会を永遠に奪われることは、成仏する前の瑞霊からすれば著しく苦痛であるわけです。
特に、霊夢は成仏の話を持ち出す前に、「この世界の幻想郷の仕組みと人間の地位の説明」「博麗の人間としての謝罪」を行うことによって瑞霊のこの世界との縁(よすが)を崩しています。