魔理沙はどのくらい語尾に「ぜ」をつけているんだぜ?

はじめに

 二次創作ではときおり殆ど全ての語尾に「ぜ」ないし「だぜ」をつける魔理沙が出現する。このタイプの魔理沙に大なり小なり違和感を覚える層というのは一定数存在し、かくいう私も僅かながら違和感を覚えはするのだが、これもまた感覚によるもので、実際原作魔理沙がどんな口調なのかということに関して具体的データとしては把握していなかった。
 仕方のないことだろう。霧雨魔理沙といえば博麗霊夢に並ぶ東方の二大看板の片割れ。ゲーム、書籍殆ど全てに登場している。なんなら妖精大戦争(ゲーム)EXボス、バレットフィリアの闇市場自機と下手すれば霊夢より原作での露出頻度は高いかもしれない(霊夢はそれぞれ分岐EDの一部、セリフなし敵に留まった)。膨大なセリフ全ての分析は大変な手間になることは想像に難くなく今回もそこまではしていない。
 今回はWin版整数作品と黄昏作品に登場する魔理沙のセリフのうち語尾が「ぜ」で終わる文の割合を調査した。なおゲーム本編中のセリフに限定し、EDと対戦セリフは対象外である(前者は私の腕前の関係で紅魔郷及び風神録のGoodエンド、花映塚のExのEDが回収できていないのとBadエンドコンプが面倒すぎて逃げている為、後者はレアセリフ及び獣王園のオンライン対戦限定セリフまで考慮したくなかった為)。対戦といえば対戦系のゲームにはストーリーにも敗北専用セリフというのがあるが、これもコンプが面倒で逃げている案件なので今回は除外させていただく(対戦系ゲームだと敵魔理沙の出現は序中盤なことが多いので全部やる必要はないのだが辛いものは辛いのだ)。代わりに敵魔理沙を負かすルートでのセリフは入れているのでそれで許して欲しい。ついでに一部作品だと体験版と製品版でセリフが違う仕様があるがこれも考慮してられないので製品版で統一している。
 斯様にガバガバな調査だが、まともな調査は後続に任せるとして、速報みたいなものだと思って読んでいただければ幸いである。

結果

 一部作品を除きセリフに句点は振られていないので文の数は感覚的なものになる。基準として違和感が出ない限りは文を分けるものとしてカウントしている。これにより文の総数が増えて、「ぜ」率が少しだけ低く見えているかもしれないということには留意して頂きたい。ただし、極めて短い単語で疑問符「?」を二連続させるセリフ(東方萃夢想の「妖気?宴会?」みたいなセリフ)は一文とカウントする、疑問符や三点リーダーのみのセリフは流石にカウントしないという例外を設けている。
 また語順入れ替えで「ぜ」が文末に来ないセリフはカウントしていない。当初はこうした修辞表現は例外的なもので結果には殆ど影響しないと考えカウントの効率を優先させたためだが、ここに関して少し特筆すべき結果が出てしまったので後述する。
 特殊例として「ぜー」と伸ばすセリフ(東方天空璋一面の「あー、暑くて死ぬぜー!」など)及び「ぜぇ」(東方輝針城四面の「さっそく見つけたぜぇ」)は文末「ぜ」としてカウントしている。
 心の中の声についてはカウントしていない。「口調」を見ているのでノイズになる可能性があったというのが根本的な理由だが、後付でさとりの読心セリフのカウントをサボる言い訳にもなっている
 人力なので文章の総数については数え間違いあるかも。結果見れば分かるように少ない作品でも100文近くあるから誤差だよ、誤差。

 さて、前置きがだいぶ長くなってしまったが結論としては以下のようになる。

割合はパーセント表記、小数点第三位で四捨五入

 まず本編+Exまで通すと魔理沙はどの作品でも100〜150文くらい喋っていることが分かった。メタ的には神主は毎回そのくらい書いているということであり、誠にお疲れ様である。
 妖々夢はやや割合が高く逆に花映塚は割合が低いという外れ値はあるが、風神録〜緋想天頃までは概ね15%前後で推移していた。しかし地霊殿以降は神霊廟でやや持ち直すものの漸減し、輝針城以降は10%にはやや満たない程度、作品によっては5%にすら達しないという水準となり、この傾向が、憑依華のみ例外だが現在まで続いている。
 前置きで述べたように今回は文の総数が多くなる数え方をしているし、そうでなくても一単語に疑問符をつけたり相手の言った単語をオウム返ししたりという話し方をする傾向にあるのが東方Projectのゲーム作品における自機勢の話し方であるから、率としてやや低く出る傾向にある点には留意する必要がある。しかし、それだけでは説明がつかないほど「ぜ」は多用していないのであり、やはり半数以上の発言に「ぜ」をつける話し方を延々とする魔理沙は二次創作の産物と結論づけざるを得ない。
 また、ある地点を境に「ぜ」の割合が減るという結果は筆者自身ここまで明確に出るとは思っていなく興味深い結果となった。ある一点で分離できるものではなく、地霊殿〜輝針城という移行期間を挟んでいるので簡単には言い難いが、Win版東方を新旧で二つに分ける際にこの辺りの時代で分ける人が多いのではなかろうかという肌感覚があり、作品史における作風の変化という観点からも分析可能なのではなかろうか。
 注意点として、作品全体で率をとるとこのような結果になるのだが、例えば整数STGの本編でずっと同じ口調で話しているのかというとそんなことはなく、一度も「ぜ」を使わない面が二面くらい続いたと思ったら次の面では四回くらい「ぜ」で文を締めているなんてこともザラである。
 例えば東方獣王園の霊夢VS魔理沙でのセリフ(両ストーリーでの共通部分)は、

おい、霊夢
巷は大変な事になってるぜ!
動物霊? 攻めてくる?
何を寝ぼけているんだ? 重要なのはそんな所じゃないぜ
これは大地の所有権の問題だ
一部の浮遊霊達が決して手放そうとしなかった大地の所有権が突然、放棄されたんだ
これはピンチじゃない、チャンスだぜ!
貪欲な霊達に支配される前に少しでも手に入れようぜ!

となり、実に四割の割合で「ぜ」を使う。獣王園はこの記事を投稿した時点での整数最新作、作品全体でも8.2%しか「ぜ」を使わない現代風魔理沙である。それでも場面によってはこのくらい多用することがあるのだ。二次創作で魔理沙に喋らせるときも、「ぜ」の使いすぎには注意しつつ、ここぞというときに「ぜ」をまとめるとそれらしくなるかもしれない。

今後の研究課題

  • ゲーム本編に限定したので、書籍のような日常会話における割合は調査できていない
  • どのような場面で「ぜ」を使うのか。まんべんなく使っているのではなく偏りがあるので、特定の場面や感情で「ぜ」を多用している可能性がある
  • 「ぜ」を使わない八割以上のセリフにおける口調の特徴。魔理沙は男性口調のキャラだが、逆に男性口調だからと言って魔理沙にはならないので、この八割、ないしは文末「ぜ」を含めた全体のバランスに魔理沙が魔理沙たる口調の特徴があるはずである

おまけ、各論

 最後に各作品について特筆すべきものを見ていこう。

1.東方妖々夢
「ぜ」率が最高の作品だが、実はこれ、ExおよびPhでそこまで「ぜ」を使わなかった結果いくらか稀釈されての数値である。本編中に限定すると割合にして21/74≒28.38%にもなる。このくらいになるとセリフを読んでいても「こいつ、ぜぜぜぜ言ってるなあ」と感じる。二次創作における「ぜ」多様魔理沙は妖々夢本編時空から来たのかもしれない。

2.東方風神録
語順入れ替えにより消えた文末「ぜ」が多分最多の作品。魔理沙にも話し方のマイブームというのがあるようだ。

「さあ行くぜ山の上まで」
「丁度いいぜ、この先を案内してくれ」
「聞いたぜ、山の上に変な神様が住み始めたんだって?」
「ま、良いぜ、とりあえずその神様の所まで案内しな」

3.東方憑依華
夢人格が存在する作品。よっぽど話し方が違ったら除外するつもりだったが特にそんなこともなかった。割合だと3/19≒15.79%と憑依華全体の12.38%より多いのだが、セリフの絶対数が少ないことによるブレの範疇と言えるのではなかろうか

4.東方鬼形獣
自機により性格が変わるという設定があったので動物霊ごとでも数えたが、
オオカミ(9/92≒9.78%)
カワウソ(5/79≒6.33%)
オオワシ(8/88≒9.09%)
という結果だった。ぶっちゃけると演出の都合なのか四面〜六面に固定セリフが多いので比較としては微妙なのかもしれない。強いていうと、カワウソで率が下がるのは気弱になっているとだぜだぜ言わないということなのだろうか。余談だがオオワシ魔理沙の性格が悪すぎてセリフ確認してるときちょっと泣いた。

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