何故リグルのテーマ曲は蠢々秋月で、髪は緑色なのか?

リグル・ナイトバグとは?


↑以前模写を行った永夜抄のリグル

東方永夜抄の1面ボスで、「蟲を操る程度の能力」を持った妖蟲。
種族は前述のように「妖蟲」だが、正確には蛍の妖怪である。

蛍や蝶は人間に人気があるため、退治されにくく妖怪に成長しやすいという。
リグル自身も自分の事を「蛍様」と呼ぶ場面がある。

主な活動場所は「草むらなど」とされている。
二つ名は「闇に蠢く光の蟲」、テーマ曲は「蠢々秋月 ~ Mooned Insect」である。

何故リグルのテーマ曲は「蠢々秋月」なのか?

本来、蛍が光る季節といえば夏である。
それに対して、彼女のテーマ曲には「秋」という漢字が入っている。
サブタイトルが「Mooned Insect(月の虫)」であることを考慮すると、彼女自身が「秋の月」に例えられており、「蠢く秋の月」といった意味合いのタイトルをテーマ曲に付けられたと考えられるだろう。

では一体何故、蛍である彼女のテーマ曲が「秋の月」なのだろうか?

キャラクター自身の特性ではなく、ストーリー上の状況から名付けられたであろうテーマ曲の例としては、秦こころの「亡失のエモーション」などがあるが、永夜抄のストーリーが展開されるのは「晩夏」でありまだ夏なのである。この線はないと言っていいだろう。

ということはリグル自身が「秋」にまつわる要素を持っている可能性が高い。
この疑問を解消してくれそうな単語が「秋蛍」である。
(なお、実際に秋に成虫が光ることで有名なアキマドボタルは日本においては対馬固有種であるため基本的に考察から除外する)

秋蛍とは?

「秋蛍」という単語には大きく分けて二種類の意味がある。

一つ目の意味は、「クロマドボタルの幼虫」の別名である。
クロマドボタルは幼虫時代の秋に強く発光する蛍であり、成虫になると発光能力が衰える。
幼虫は陸生でありカタツムリなどを捕食する。
ゲンジボタルやヘイケボタルなどの幼虫が水蛍と呼ばれるのに対し、彼らを含むマドボタルの仲間の幼虫は土蛍と呼ばれる。

リグルが該当するのはこちらではないだろう。
リグルの外見は成虫の甲虫(補足すると蛍は甲虫の中の1グループである)をベースとしており、蛍の幼虫とは似ても似つかないからである。
成虫になった後妖怪化したと考えても、クロマドボタルのメスの成虫は幼虫に近い姿をしており、リグルのように立派な羽(マントの形になっている)は持たないのである。どちらにせよ似ても似つかない。

二つ目の意味は、「季節を外れ秋になっても光っている蛍」である。
花で言うところの「狂い咲き」に近いだろうか。
こういった秋蛍になりやすいと思うのはヘイケボタルである。
ヘイケボタルの成虫は7月~8月と蛍の成虫の中ではかなり遅めの時期に光り、10月ごろに目撃されたケースもあるようだ。
元々の活動時期が秋に近ければ、秋にずれ込む確率も高いと考えた。
また、「晩夏の永夜抄で登場する蛍」という演出面で考えても、ヘイケボタルはぴったりである。

以上のことから、リグルは秋に成虫になったヘイケボタルが妖怪化したものと考察する。
季節外れの蛍は注目を集めやすいため、後のリグルとなる秋蛍が集めた人間からの「異常視」の眼も妖怪化を後押ししたのではないだろうか?

何故主な活動場所が「草むらなど」なのか?

こうなると、さらに疑問が浮かび上がってくる。

ご存じの通り、ヘイケボタルの主な活動場所は水辺である。
しかしリグルの主な活動場所は「水辺など」でもなく「川辺など」でもなく「草むらなど」なのである。
「その方が蟲を操るのに都合がいいからでは?」と言われればそこまでだが、ヘイケボタル、というか一般的な蛍は川のイメージが強いだけに川についての記述がないのは不自然に思える。
草むら以外に生息する蟲も多数いる。強力な手札になるであろうオオスズメバチは本来山の樹などに巣を作る蟲である。

また、リグルが操る蟲のうち最も注意しなければいけないのは「恙虫(ツツガムシ)」とされている。
そのツツガムシのうち、求聞史紀で言及されているような最も危険な病(古典型ツツガムシ病)を引き起こす「アカツツガムシ」は、川辺や中州に生息しているのである。

このことから「草むらなど」の「など」の部分に川辺も含まれていることが推測できるが、何故メインで表記されているのは川辺ではなく草むらなのだろうか。
もしかすると蠢々秋月の秋と同様に、リグル自身が何かしら「草むら」にまつわる要素を持っているのかもしれない。

そして、私は「蛍」と「草」をつなぐワードを知っている。
「腐草為蛍」である。

「腐草為蛍」とは?/何故リグルの髪は緑色なのか?

腐草為蛍。これは「くされたるくさほたるとなる」と読む。

古くは、「蛍は枯れて腐った草から発生する」と信じられていた。
それを指すのがこの言葉である。
草の根元に潜りこんだ蛹が羽化すると判明した現代においては幻想の言葉だ。
しかし東方Projectの舞台、そしてリグルの生きる世界は幻想郷。
外の世界の幻想が常識となっている世界である。
「腐草為蛍」も幻想郷では当たり前の自然現象になっている可能性があるのだ。

先ほどのヘイケボタル説と合わせると、

  1. 夏、枯れて腐った草むらからヘイケボタルたちが発生していたが、枯れ遅れた草もあった
  2. 秋になりその草も枯れて腐り、ヘイケボタルとなり人々から注目を集め妖怪となった
  3. それが後のリグル・ナイトバグである

となる。

リグルは蛍になる前は草として生きており、ルーツである草が多く生える「草むら」を好んでいるのではないだろうか?

また、「蛍へ生まれ変わる前の生」の色が現在の外見にも反映されていると考えれば、タイトルにあるもう一つの疑問にも説明がつく。
リグルの髪の緑色は「草の色」だったのである。
発光を行う蛍の成虫の体色は主に黒やピンク(もしくは赤)で構成されているため、生物としての蛍だけでは緑色に説明がつかないのである。

結論

リグル・ナイトバグは元々は草であり、それが秋に枯れ腐ったことで蛍となり、注目を集め妖蟲となった。
テーマ曲が「蠢々秋月 ~ Mooned Insect」で、髪の色が草を思わせる緑色なのはそのためである。

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