謎の妖怪「テンカジン」
天火人ちやりの元ネタは群馬県に伝わる怪火「テンカジン」だとされています。この妖怪はすこぶる謎が多く、人の血を吸う火の玉という点は共通していますが、その正体は伝承によってまちまちです。
いわく大きな貂であるとか、恨みを残して死んだ那波又太郎の亡霊だとか、チュパカブラだとか。
はっきりしません。要するに謎です。
謎なので好き勝手に解釈してしまおうと思います。以下はそういう趣旨の記事です。
残夢の血を吸った虱
日白残無の元ネタの禅僧「残夢」は奇行の多い人でした。彼の奇行の一つに「新しい服にわざわざ古い服の虱(シラミ)を移してから着ていた」というエピソードがあります。
理解不能な奇行によって表現される神秘性ということで、おそらく一種の神異僧的な説話として語られたエピソードと思われますが、今回はこの話を踏まえて、日白残無と天火人ちやりの関係を解釈していきます。
全て儂の掌の上じゃ
三頭慧ノ子は山犬だった頃、残無の肉を喰らって不死の妖獣になりました。また孫美天は残無の力によって猿から猿神になりました。
だとすれば残無の血を吸った虱が妖怪になったとしても、まあ、おかしくはありません。いやおかしい
天火人ちやりの正体は実は残無の血を吸った虱の妖怪だったのです。
残夢様が血を“やった”から「ちやり」
「天火人ちやり」という名前も「天火人」はテンカジンであることが明らかですが、「ちやり」の方が難解です。ストレートには理解しがたい日本語です。
しかし残無様の血を吸った虱がちやりだとすれば解釈はすっきりします。残無様が血をやったから「血遣り(ちやり)」という解釈が通ります。これを採用するなら名付け親は残無様だったことになります。
まあ、ちやりは全く言及していませんが。
三頭慧ノ子は残無の肉を喰らったことをすっかり忘れていたので、ちやりも自分の名前の由来を忘れていたとしても、まあ、矛盾はありません(ガバガバ証明)
時代的、地理的つじつまについて
妖怪「テンカジン」は那波又太郎の亡霊と信じられました。ということは那波又太郎の死後に出現しだした妖怪という事になります。那波又太郎はざっくり戦国時代の人です。そして残無様も戦国時代の人です。残無様の血を吸って妖怪化した“ちやり”がその頃暴れ出したのだとしたら、時代的なつじつまは合います。
また「テンカジン」は群馬県の妖怪です。残夢大禅師は会津や常陸に住んだ人ですが、越後や駿河でも目撃されており、行動範囲の広い人だったようです。群馬県は十分彼の行動圏内に入るでしょうから、地理的なつじつまも合います。
妖怪扱いされた吸血虫「恙虫」
なお、妖怪扱いされた吸血虫に恙虫(ツツガムシ)というのが実際にいたということを参考に挙げておこうと思います。ダニのような実在する虫ですが恙虫病という凶悪な病を媒介して、場所によっては感染した人の三割が亡くなったそうです。あまりにも凶悪過ぎて妖怪扱いされました。
なんすか
旧血の池地獄で血を吸い放題な天火人ちやり。彼女がここに安住するのは、血を吸い放題だった残無様の衣の中の記憶がそうさせるのかもしれません。
コメント