天火人ちやりと元ネタ「テンカジン」について考える

確認できるテンカジン

現在、確認できた範囲のテンカジンの情報は、

  • 三元社「旅と伝説」
  • 村上健司「妖怪事典」
  • 氷厘亭氷泉「日本怪異妖怪事典 関東」

に記載があり、うち後者二冊は「旅と伝説」を出典元としており、「旅と伝説」がテンカジンにおいて重要な文献であることが伺える。

※文献の情報は質問フォーラムで回答いただきました。ありがとうございます。

旅と傳説

旅と傳説は三元社より昭和3年1月~昭和19年1月まで発行された鉄道雑誌である。
岩崎美術社によって復刻版も発行されていた。
現在はいずれも絶版。

雑誌の内容としては「旅」の色合いが濃く、全国の観光地や伝承・伝説を扱っていた。その多くは寄稿であり、柳田国男、折口信夫、南方熊楠なども名を連ねる。
雑誌としてはその内容から民俗学的な評価を受けている。

旅と傳説のテンカジン

「テンカジン」が寄稿された旅と傳説は昭和9年発行の第6年9号(通巻69号)

寄稿者は高井義信(なぜか目次では高井義雄、どちらが正しいのか不明)

内容としては寄稿者の村に伝わる話であり、要約すると、

その村では夜、近くの寺の業林でテンカジンという提灯のような火が出て人の生血を吸うと伝わっていた。
それはかつてその地の領主であった邦派又太郎の亡魂であり、上杉謙信が攻め入った折に民が助けに応じなかったことを恨み亡くなったものだという。
しかし現在では見た者はなく、ある人は貂の仕業だと。
昔、ある飛脚が夜に村を通ったとき、不思議な提灯に遭いこれを怪異だろうと刀で切った。飛脚に話を聞いた村人が翌日確認してみると貂が倒れており、以降テンカジンは現れなくなった。

という話。

なお天火人という字はこの寄稿者の宛字である。

また、旅と傳説の編集後記では「ジャンジャン火と同じ型」と評されている。

東方における天火人

東方獣王園のOmake.txt

その正体は大きなムジナだと言われているが、その姿を見た者はみんな、ムジナだとは思えないという。

前述の通り、旅と傳説ではテンカジンの正体は貂ではないかと言われていたが、東方獣王園ではムジナになっている。
これは「日本怪異妖怪事典 関東」での誤記であり、貂が貉になっている。
東方獣王園の天火人はこれから来ているものと考えられる。

東方外來韋編2024のインタビュー

血と火を使う妖怪があまりいなくてね。探してたんですけど、見たこともない妖怪がいた。とはいえ僕の中のテーマではチュパカブラのつもりなんです。
(中略)
ちやりも何の怨みがあるとかではなくて、怨みが集まって、このキャラ絵に描いてある鬼火になっている。

このインタビューから分かるようにZUN氏は天火人とチュパカブラを混合して新たな天火人像を生み出しているため、東方における種族「天火人」と伝承「テンカジン」には乖離が見られる。

怨みをもってテンカジンになったといわれる邦派の亡魂は天火人ちやりに関連性があるとは言いづらく、天火人ちやり自身に怨みはなく鬼火の集合体である。
(スペルカードの一つとしてなら邦派の亡魂も出ることはあり得る?)

一方で、テンカジンも邦派の亡魂であったり貂が正体だったとしながら”至る所に現れた”とも書かれているため、案外ちやりのような状態なのかもしれない。

さらなる天火人研究への期待

今回の調査で分かったのはここまで。

旅と傳説で確認できたテンカジンはその村の者から寄稿によるものであり、亡魂と貂という二つの物語が伝わってはいたものの、その伝承も断片的なものということもあり、外部での伝承は望めないものだった。

しかしながら、旅と傳説でも書かれているようにテンカジンは「じゃんじゃん火」などの鬼火に似たものがあり、その派生であるとも考えられる。
今後の天火人研究に期待したい。

コメント

  1. 11 より:

    テンカジンとはあまり関係ありませんが、
    チュパカブラの正体は疥癬という皮膚病にかかったたぬきの場合があるそうです。
    だからチュパカブラの異名がついてるのかもしれないですね。

  2. Ryuufa より:

    以津真天のように貂に怨霊が乗り移った姿なのかもしれないですね