八坂神奈子と洩矢諏訪子のキャラクターを考える
まずは東方風神録のキャラ設定から二人の人物像を考えてみる
明神入諏神話
(前略)
そんな彼女の王国の元に大和の神々が侵略してきたのである。
王国を訪れた大和の神とは、神奈子であった。
(中略)
諏訪子は抵抗し当時最先端であった鉄製の武器を持って戦った。
しかし、神奈子は細い植物の蔓をかざすと、諏訪子が持っていた大量の鉄の輪は、たちまち錆びてボロボロになってしまった。東方風神録 キャラ設定 洩矢諏訪子
これは諏訪信重解状などに見られる諏方明神と守屋大臣の神話での
爰明神者持藤鎰
大臣者以鐵鎰
懸此所引之
明神卽以藤鎰令勝得軍陣之諍論給諏訪信重解状
から来ている。
諏訪明神は建御名方神、守屋大臣は洩矢神の事であるとされていることから、ここでは神奈子が建御名方神、諏訪子が洩矢神と読める。
守矢の信仰
この王国を自分の物にするのは諦めた。
代わりに新しい神様を呼び洩矢の神と融合させて、その神様を王国の中では『守矢(もりや)』、外では別の呼び名で呼び分ける事にした。東方風神録 キャラ設定 洩矢諏訪子
これは守矢神社が幻想入りする以前の話であるため、幻想郷の外の諏訪神社のことを指している。
ここでの「外では別の名」は諏訪大社の主祭神である建御名方神または八坂刀売神であると推測できる。
よって諏訪子は洩矢神の性質に加え、建御名方神、或いは八坂刀売神が融合されている状態にあるといえる。
なお、東方儚月抄にて八雲紫が
あそこの神社本当の祭神は諏訪の土着神だけど…建前の祭神は建御名方神
東方儚月抄 〜 Silent Sinner in Blue. 底巻 19話
と発言しているため、諏訪子は建御名方神と洩矢神の融合である可能性が高い。
守矢家の系図
早苗は今では神奈子の巫女であるが、奇跡を呼ぶ事が出来るのは彼女が実は、諏訪子の遠い子孫だからである。
東方風神録 キャラ設定 洩矢諏訪子
神長守矢氏系譜では守矢家は洩矢神の後裔(建御名方神の後裔と解釈する説もある)と記録されている。
諏訪史料叢書 巻28 国立国会図書館デジタルコレクションより
早苗が神奈子ではなく諏訪子の子孫であることを強調している以上、神奈子がこの系図への関連がほぼないと見れ、神奈子は建御名方神、洩矢神どちらでもないことになる。
神奈子と諏訪子のスペルカード
神奈子と諏訪子のスペルカードに注目すると大きな違いがある。
諏訪子のスペルカードは洩矢神や関連のある土着神に関するものが多い一方、神奈子は特定の神ではなく諏訪神社そのものに関係するものが多くなっている。
これが神奈子が何の神であるのか曖昧にしている要因の一つとなっている。
八坂神奈子と洩矢諏訪子の関係について
ここまでの情報を整理しよう。
上記の4つの結論をまとめると、
- 神奈子は建御名方神、諏訪子は洩矢神
- 諏訪子は建御名方神と洩矢神の融合
- 神奈子は建御名方神、洩矢神どちらでもない
- 神奈子は特定の神ではなく諏訪神社そのものに関係するものが多い
となる。
1が他と矛盾しているように見えるが、2の内容において
新しい神様とは、大和の神話の名目を保たせる為の名前だけの神であった。
東方風神録 キャラ設定 洩矢諏訪子
とあるため、東方では建御名方神は信仰のために生み出された名前だけの存在であり、1における侵略側が建御名方神の名で伝わっているのもこれに帰属すると考えられる。
よって1は偽りの情報である。
また4の神奈子の神格が表面化されていない現象についても、2を踏まえると信仰自体は神奈子自身ではなく諏訪子を介して得られているため、神奈子の神格でなく神社の信仰が形となっていると読み取れる。
八坂神奈子と洩矢諏訪子の実態についての考察
神話における関係
神話では洩矢神やその他の土着神のいる諏訪を建御名方神が侵略し、洩矢神に置き換わって建御名方神が統治している。
東方における古代の関係
東方では諏訪子の統治していた守矢の王国に大和の神々を率いた神奈子が侵略した構図になっている。
東方における守矢はどうなったのか
東方における守矢の王国は神話とは異なり、神奈子が勝利した後も信仰が得られなかったことから表向きは諏訪子を残したまま、名前だけの存在である建御名方神を融合させた。守矢と外の世界両者の信仰を集めつつ神奈子はその力を借りることで裏で支配するに至ったのである。(※ここの「外の世界」は幻想郷の外ではなく守矢の王国の外のこと)
コメント
風神録のテキストの情報が判りやすくまとめられていて、大変参考になりました
侵略者側が建御名方という情報も、力を借りやすくする(神奈子も建御名方を名乗ることで諏訪子(建御名方)の信仰を得られる)ために残されたのかもしれないなと思いました
そうですね。建前は諏訪は建御名方神が統治したことになっているので、信仰を得るために神奈子が侵略時からの情報を上書きしたと考えられます。