饕餮に効きそうな攻撃を考える

前論

饕餮尤魔(以下尤魔ちゃん)はあらゆるものを吸収する力を持ち、通常攻撃した程度ではむしろそのエネルギーを吸収して強くなってしまう。博麗霊夢を始めとする剛欲異聞主人公組は最終的には退治を断念せざるを得ないほど強力であり、フランドール・スカーレットにより尤魔ちゃんが破壊されることで事態は収束したが、霊夢や魔理沙等名だたる面子が最終的に勝利できなかったという強力なインパクトを界隈に残した。

しかし、フランちゃんが破壊に成功したという点から見るに、完全無欠の能力でもないことは明らかである。本稿では、今後尤魔ちゃんが再び牙を剥いた時のために、有効そうな手段をいくつか考えてみたい。

成功例:フランドール・スカーレット

 フランドール・スカーレット(以下フラン)はあらゆるものを破壊する能力を持つ。これにより、吸収も何もあったものではなく破壊という結果のみをもたらされたのだろうか、フランは一度尤魔ちゃんの討伐に成功している。このことから、過程をすっ飛ばして結果だけ出てくる系の能力には弱いということが考えられる。以下ではこの考察を仮に真であるとして論を進める。

案1:西行寺幽々子

 フランの能力が有効だったことから、西行寺幽々子の能力も同様に有効である可能性がある。西行寺幽々子は死を操る能力を持ち、死なない相手以外なら問答無用で殺すことができる。欠点としては尤魔ちゃんは畜生界にいる動物霊であることから既に死んでいる可能性が高く、一度死んでいるから効かないと言い張ることで突破される可能性がある。しかしドラゴンボールみたいに一度死んだ状態でもう一度死ぬと完全に死ぬみたいな設定がある場合は依然として有効打たりうるだろう。また、尤魔ちゃんが一度死んでいる場合、尤魔ちゃんを殺したのは同様の能力の持ち主だった可能性もある。備えよう。

 なお西行寺幽々子が尤魔ちゃん討伐時に動員されなかった理由については、西行寺幽々子は一見何考えてるかわからないが実はあの八雲紫の思考についていける程知能が高く、摩多羅隠岐奈にとってはフランよりも御しづらそうだった、摩多羅隠岐奈がロリコンだった、上記の理由により攻撃が効かない恐れがあり、フランのほうが確実だった等の理由が考えられる。

案2:兵糧攻め

 相手を倒す手段は攻撃だけではないというのは戦略における基本的な発想であり、兵糧攻めは古来より様々な堅城に対し行われてきた。尤魔ちゃんも直接攻撃に対してはめっぽう強いが、何せ剛欲な腹ペコキャラである。飢餓には弱いと考えられる。

 さて、尤魔ちゃんに兵糧攻めを仕掛けるには、尤魔ちゃんが食べられる物を入手できない状況を尤魔ちゃんが餓死するまで継続する必要がある。人間相手なら包囲、水攻め、補給線への攻撃など様々な手段があるが、尤魔ちゃんは三次元機動が可能な幻想少女であり、更に何でも食べる。土程度なら普通に食べる恐れがあるため、通常の手段では達成できない。

 可能そうな手段として、尤魔ちゃんが食べられない素材で全方向を囲った空間に尤魔ちゃんを幽閉するというものが挙げられる。「尤魔ちゃんは何でも食べるんだからそんな素材ないよ」と思うかもしれないが、実は作中に一つだけ明確に尤魔ちゃんが食べられないであろう素材が登場しているのだ。

埴安神桂姫謹製セラミック

 である。この素材は霊魂を含まないため、動物霊等霊魂100%の存在からの攻撃を受けないという性質を持つようだ。

 鬼形獣のストーリーは埴安神桂姫のセラミック軍団に勝てない動物霊たちが一計を案じ地上に侵攻をかけ、反攻してきた地上の連中を埴安神桂姫にぶつけるというものであった。この作戦には尤魔ちゃんも参加している。尤魔ちゃんがセラミックを食べられるなら、この作戦は不要となるのだ。つまり、尤魔ちゃんは埴安神セラミックを食べられない可能性が高い。

 以上のことから、埴安神セラミック製の檻かなんかの中に尤魔ちゃんを放り込めば兵糧攻めで勝つことは可能であると思われる。最近はどうぶつヤクザ達にもまだ生きている仲間が加わり、埴安神への対抗手段を得たが、尤魔ちゃんが引いたのは天火人ちやりである。あいつは助けに来んやろ。

 旧友の藍か剛欲同盟に加入した後脱退した描写のないマミゾウあたりなら来るかもしれない。

案3:精神攻撃

 尤魔ちゃんは物理面では無敵のアティチュードを誇るが、精神面ではどうだろうか。変貌し、弱くなってしまったかつての仲間に勝利して涙するなど、センチメンタルな一面もあるのだ。よって、尤魔ちゃんに精神面での攻撃を仕掛けることは大いに有効であると考えられる。以下に有効な精神攻撃手段を持ってそうな面子を提案してみる。

日白残夢

 日白残夢は虚無を操る能力を持つ。獣王園ではその能力をふんだんに発揮し、吉弔八千慧を腑抜けにしていたことは記憶に新しい。この能力を使い尤魔ちゃんのやる気をゼロにすれば、戦わずして勝利することが可能だろう。

 日白残夢は体面上あの吉弔八千慧や尤魔ちゃんに様付けされる程の実力者である。であるならば尤魔ちゃんへの対抗手段を持っていると考えるほうが自然である。相手の気力を削るという面で見れば吉弔八千慧も同等のやり方で戦略的勝利を得ることが可能かもしれない。

 余談だが、獣王園では尤魔ちゃんより吉弔八千慧のほうが深くこの能力の影響を受けていた。全くの妄想となるが、真相を知れば「あほくさ、やってられんわ」となる尤魔ちゃんは割りと飽きっぽく冷めやすい性格であると言える。一方吉弔八千慧は地上への侵攻に割と熱心であり、「キー」等の名言を残している程である。組長組の中でそれぞれのやる気と能力を勘案した結果、残夢の策に最も脅威となりうるのが吉弔八千慧であると判断したのではないだろうか。驪駒?あいつ脳筋だし唯一残夢様を普通に尊敬している節があるので…

八雲藍

 恥ずかしい過去がフラッシュバックして急に消えたくなった経験がある読者は多いだろう。絵師は昔描いた絵を見ると死にたくなる傾向があるという話もある。知られたくない、思い出したくない過去は最も有効な精神攻撃のソースとなりうる。書いてるだけで思い出したくない過去が脳裏によぎり嫌になってきた。帰っていいですか。

 さて、八雲藍がかつて尤魔ちゃんの仲間だったという事実は獣王園三大衝撃の新事実の内の一つに数えられる。しかもちゃんと記憶も残っているようだ。であるならば、八雲藍は当然尤魔ちゃんの恥ずかしい過去を知っているはずなのだ。即ち、八雲藍は尤魔ちゃんの心を抉る強力な武器を持っていると言えよう。最もこれは尤魔ちゃんから見ても同じことが言える。八雲藍vs尤魔ちゃんの恥ずかしい過去暴露合戦…見たくないですか?超見てぇわ。

 また、八雲藍自体が尤魔ちゃんの精神的弱点となっている要素も否めない。なんかの物理書籍に載ってた気がする「訳の分からない理由で八雲紫に折檻される八雲藍」の画像とか見せたら尤魔ちゃんは静かに涙を流すことだろう。

プリズムリバー三姉妹

 精神攻撃といえばこの人たちである。音楽を介して精神に作用するというメカニズムも吸収の影響を受けにくそうだ。ややおセンチ気味の尤魔ちゃんにはルナサの演奏で追い打ちをかけるのがいいだろう。

案4:冷気

前提

 ここからは熱力学的要素を交えて説明していく。筆者も門外漢なのであまり難しい話にはならないと思うので安心してほしい。というか熱力学はあまりにも複雑であり、直感的かつ低次元の理解しかしていない筆者の論は穴だらけである可能性すらある。どうかご容赦願いたい。

まず話を進める上でいくらか仮定を追加する。

      1. 尤魔ちゃんは恒温動物である。
      2. 尤魔ちゃんは熱力学第一法則を破らない。

以上である。特に異論が出るような内容でもないだろう。恒温動物というのは哺乳類のように、体温を一定に保つ機能を持つ生物のことだ。ここでは「尤魔ちゃんの肉体は自動的な機能として下がった体温を体内に蓄えた化学エネルギーを熱に変換して元に戻そうとする」と理解して頂きたい。

 熱力学法則については、「尤魔ちゃんは無からエネルギーを取り出して活用することはできない」=「何かしらの活動をするためにはそれに必要なエネルギーを蓄えておく必要がある」「尤魔ちゃんが活用できるエネルギーは常に有限である」と理解して頂ければ十分である。これは熱力学法則の第一法則にあたる。

 第一法則を破るというのはとんでもない偉業で、これを成し遂げれば人類が未だ実用段階には至っていない安定した核融合炉を運用している霊烏路空が未だアインシュタインあたりの掌で踊っている時代遅れの鳥と化す位にはヤバい。創作上では一言で済ませられるかもしれないが、その壁は軽々しく超えて良いものではないのだ。ちなみに蓬莱人はこれを部分的に突破している可能性がある。尤魔ちゃんも第二法則の方は突破している可能性がある。創作なんてそんなもんなのだ。

本論

 「冷たい」という状態は、「保有する熱エネルギー量が少ない」という状態である。これを高エネルギー体に与えた場合、熱が伝導してエネルギー保有状態が平均化され、高エネルギー体の持つ熱エネルギー量は低下する。これを冷却という。

 さて、上記の前提を元に、尤魔ちゃんを冷やしたら何が起きるのかを考察してみよう。お腹が壊れるとか風邪を引くとかそんな話ではないぞ。

      1. 尤魔ちゃんを冷却すると、当然尤魔ちゃんは体温が下がる。
      2. 体温が低下した尤魔ちゃんの肉体は、自動的に体温を元に戻そうとする。
      3. その際、尤魔ちゃんが蓄えたエネルギーの一部が消費される。
      4. 以上のプロセスを尤魔ちゃんが蓄えたエネルギーが枯渇するまで継続する。
      5. エネルギーが枯渇するか、体温の上昇を超えるペースで冷やされた場合、尤魔ちゃんは凍結する。

 総括する。何らかの手段で尤魔ちゃんを冷却すると、尤魔ちゃんの持つエネルギー総量は減少する。尤魔ちゃんの持つエネルギー総量は有限であるため、枯渇するまで継続すれば活動停止に追い込めるのだ。相手が熱力学法則を遵守している場合、この手段は常に有効である。

 この手段には明確な欠点が二点ある。一つは兵糧攻め同様に尤魔ちゃんがエネルギーを摂取できない状況に持ち込んでいない場合、周囲のエネルギー源を含めた全てが枯渇するまで冷やし続けなければならない点、もう一点はエネルギーを奪う手段として冷却は非常に効率が悪い点である。

 どれくらい効率が悪いかというと、アイスクリームを食べる際、そのアイスクリームから得られる熱量を冷却によって相殺するためにはそのアイスクリームを-1800℃まで冷やす必要がある。食べる人間を冷やす場合は体重にもよるが大体3℃くらい冷やす必要がある。比熱の計算がめんどいので仮に尤魔ちゃんを40kgの水の塊だと仮定し、尤魔ちゃんが1Lの原油を飲んだ場合、そのエネルギーを相殺するには尤魔ちゃんを237℃冷やす必要がある。逆に尤魔ちゃんを一度絶対零度まで冷却しても、原油1.25L分のエネルギーがあれば復帰される恐れがある。

 以上のことから、冷却は理論上可能ではあるが、途方もない手段であることがわかる。ダイエットの手段として「寒いところで裸になる」が推奨されていないのと同じだ。

 冷気を纏った攻撃なら吸収されてもエネルギー削れて有効打になるかもしれないという考え方もできる。しかし攻撃手段として有効なほど加速された物体が持つ運動エネルギーは、大抵その物体を絶対零度から人肌程度まで加熱するのに必要なエネルギーをより大きいため、これも難しいだろう。攻撃を絶対零度以下まで冷却できれば有効打たりうるかもしれないが、これは熱力学第三法則を破ることになる。この状態の物質の性質を考察することは素人には全く困難である。多分タイムマシンとかになるんじゃないだろうか。

結論

 ここまで尤魔ちゃんを倒す手段をあれこれ考えてみた。気分はさながら吉弔八千慧である。しかし考察が長くなりすぎたため一旦ここで筆を置くこととしたい。

 今回紹介した戦法は一個人の考察に過ぎない。三人寄れば文殊の知恵とも言う。読者諸兄も尤魔ちゃんを倒しうる独創的な戦法を考案してみてほしい。

 また、尤魔ちゃんの野望に次回があるとすれば、八雲紫、八意永琳、稀神サグメ等といった頭脳派が作戦立案に回ると推測できる。その際、摩多羅隠岐奈と同じ策では何とも面白くないではないか。彼女らの発案にも期待したいところである。

 残されている謎としては。剛欲同盟のことを割と酷評していた驪駒早鬼が尤魔ちゃんにどのように対抗していたかである。物理一辺倒の驪駒にとって、物理無効の尤魔ちゃんは最大の天敵とも言えるからだ。押す引く等の物理的干渉ができるのなら絞め技や関節技とかが効くのかもしれない。

 「完全無欠」「無敵」「絶対に勝てない」等というワードは、時に反感を買う。筆者はそういった傾向が特に強く、CoCなんかで「神話生物は上位存在なので人間では勝てません」なんて言われると滅茶苦茶ムカついてなんとかして策を弄じてブチ殺してやりたくなるし、「幻想郷は妖怪が管理する人間の牧場みたいなもの」と言われれば「人間は妖怪に敗れたのか!」となる。気分はさながら宮出口瑞霊である。「そういう創作に向いていないんじゃないか」と言われればそれまでであるが、 しかし筆者はそういったムカつきを生む反骨精神こそが欲望と並ぶ人間の原動力であり、美点であり、本質であると考える。

 そうした点から見ると、一見無敵の能力を持ちながら、この様に弱点を考察する余地が豊富な点は饕餮尤魔の大きな魅力であると言えるのではないだろうか。饕餮尤魔は我々の前に、険しく、高いが、しかし登頂可能な山として立ちはだかっているのだ。そういった山は大きければ大きいほど我々を奮い立たせ、瞳には魅力的なものとして映る。つまり饕餮尤魔とは、爆乳なのである。

コメント