東方智霊奇伝の黒幕「八雲紫」説

幻覚度 5

はじめに

本考察は『東方智霊奇伝 反則探偵さとり』と『東方智霊奇伝 反則探偵さとり 迷宮編』(本文では前者を「旧智霊奇伝」後者を「迷宮編」と表記し、両方の意味が含まれる場合は「智霊奇伝」と表記する)における事件は八雲紫が引き起こしたのではないか、というものである。

明確に正解・不正解がはっきりする考察なのである意味リスキーなものであるが、こういう考察はリアルタイムで追っていた人間にしか出来ないものであるし、外れていたとしても、当時こんな考察をしていたというのが残ればそれはそれで面白いと思ったため、この考察をまとめておこうと考えた。

また、この考察に行き着いたそもそものきっかけは「紫様が怨霊に負けるわけがない」という思いであり、オタクの都合の良い解釈が多々含まれていることにも留意していただきたい。

根拠1:昏睡した状態が誰にも確認されていない

旧智霊奇伝の第一章 第四話・後では瑞霊に憑依され、魔力を貪り尽くされた妖怪(広義)は昏睡状態に陥るということがさとりによって示されている。実際、旧智霊奇伝において瑞霊に憑依された妖怪は、1人を除いて昏睡した状態が確認されている。その除かれた1人こそが八雲紫である。死体が確認されていないのならば被害者だとは断定できないだろう。

それに、被害者だと思われた人物こそが真犯人であった、というオチは様々なミステリ作品で用いられている。

根拠2:瑞霊が憑依した人物で唯一能力が使用できている

これまでに瑞霊は、心を読む程度の能力を持つさとりや、時間を操る程度の能力を持つ咲夜、永遠と須臾を操る程度の能力を持つ輝夜など、有用そうな能力を持つ人物に取憑いてきたが、いずれの能力も用いていない。

また、迷宮編第二章第二話において、にとりに憑依した際に爆発事故を起こすという(仲間の河童が川流れ的なミスと評するほど初歩的な)ミスをしたり、迷宮編第六章第一話の回想シーンにおいてさとりが「恐らくだけど怨霊に操られた奴に大技は使えない」と発言していたことから、瑞霊は憑依した人物の持つ知識や技能を引き継げず、本来の力も出し切れないことが推察できる。

しかし、瑞霊が八雲紫に憑依していたとされる場面においては、境界を操る程度の能力を頻繁に使用している。それも、自身がワープするだけでなく、藍や橙を隙間で冥界に呼び寄せるというような芸当もやってのけている。にとりの知識すらコピーできなかった瑞霊が、紫の能力を使いこなすことができたとはどうしても考えにくいように感じる。

また、永夜抄のキャラ紹介では以下のような記述がある

境界(結界)を操る事がどれだけ危険で強大な力なのかは計り知れない。紫の様なちょっと変わった妖怪か、力の重圧に耐えられる者で無いとその力は扱えないのだ。

物理的に扱えないという意味でなく、責任面の話の可能性もあるが、やはり瑞霊が一朝一夕で扱えるような能力ではないと私は考える。

根拠3:「怨霊の正体と目的を貴方に伝えます」

旧智霊奇伝第二章第六話において紫は「怨霊の正体と目的を貴方に伝えます」という発言をしていた。しかし、どこかおかしくないだろうか?

後の展開を見れば判るようにこの段階では、霊夢に怨霊の正体が宮出口家の者であるという情報が伝えられていないのである。瑞霊の生きていた時代を知らない霊夢でさえ、宮出口の名を聞けば博麗神社に仕えていた家のことだと判るぐらいには宮出口家の存在を認知していた。ましてや、あの紫が宮出口家のことを知らなかったとは考えにくい。紫は意図的に情報を伏せていたのではなかろうか

根拠4:旧智霊奇伝第二章における瑞霊の憑依経路が謎

旧智霊奇伝第二章「幽人、意気妖々に夢を説く」(通称妖々夢編)では4人の人物が瑞霊に憑依されている。その4人とは、前章から瑞霊に憑依されている「霧雨魔理沙」、亡霊の「西行寺幽々子」、悲劇のヒロイン「アリス・マーガトロイド」そして「八雲紫」である。

そしてその憑依順は「魔理沙」→「幽々子」→「アリス」→「紫」であると推察できる。

一応その根拠も述べておく。まず、魔理沙が幽々子の元へ瑞霊を運んだ様子は作中で明確に描写されており、さとりも心を読んでその事実を認識していたため「魔理沙」→「幽々子」については疑いようがない。次に幽々子とアリスの憑依順についてだが、アリスは幽々子が快復した後でも昏睡状態に陥っており、幽々子より先に被害に遭っていたとは考えにくい。よって「幽々子」→「アリス」そして、紫は昏睡状態のアリスの元へ魔理沙を連れて行っており、この時点で瑞霊に憑依された状態でなければ話がおかしくなる。したがって「アリス」→「紫」である。

しかし、このまま「魔理沙」→「幽々子」→「アリス」→「紫」と考えると、幽々子がアリスの元へ瑞霊を運び、その後にアリスが紫に瑞霊を移したというとても奇妙な状態になってしまう。

このことに関して色々考えた結果、実は「魔理沙」→「幽々子」→「魔理沙」→「アリス」→「魔理沙」→「紫」と全て魔理沙が媒介してたのではないか? とまで考えたが、やはりどうあがいても頓珍漢なものになってしまう。

だがここで、紫は実は被害者ではなく黒幕であったとすればどうだろうか? 自分が瑞霊に憑依されていたフリをしていたとすれば?

元祖反則妖怪である紫が偽装工作をしていたとなれば、トリックに関しては最早なんでもありである。それこそ、具体的に何をしたかまで考える必要もないぐらいに。

根拠5:旧智霊奇伝における八雲紫の二つ名

この根拠は少しメタ的であり、他の根拠と比べても一段階ぐらい幻覚度の上がるものである。

以下のリストは旧智霊奇伝における登場人物の二つ名を出演順にまとめたものである。

  • 動けない大図書館(パチュリー)
  • 楽園の探偵巫女(霊夢)
  • 森の魔法探偵(魔理沙)
  • 完全で瀟洒なメイド(咲夜)
  • 紅魔館の門番(美鈴)
  • 究極探偵の助手猫(お燐)
  • 紅魔館の吸血鬼(レミリア)
  • 吸血鬼の破滅的な妹(フラン)
  • 地の底の安楽椅子探偵(さとり)
  • 華胥の亡霊(幽々子)
  • 半人半霊の庭師(妖夢)
  • 探偵と刑事の境界(紫)
  • すきま妖怪の式(藍)
  • すきま妖怪の式の式(橙)
  • 七色の人形使い(アリス)

このリストの濃い字で示した部分に注目して欲しい。全て探偵関連の二つ名になっていることが判ると思う。まず霊夢と魔理沙、お燐、さとりに探偵関連の二つ名が付いている理由はなんとなく推測できる。この4人は智霊奇伝のストーリーに全編通して出演するレギュラーメンバーであるからだ。実際、迷宮編一巻の2~3Pにあるキービジュアル(?)を見てもこの4人がピックアップされていることが判る。

だが、紫はどうだろうか? 旧智霊奇伝の第二章で初登場し、被害者となってからは迷宮編の第五章第一話まで出番は無かったし、その出番以降も殆ど姿を現しておらず、他の4人と比べても出演が少ないと言わざるを得ない。

ならば何故、紫にこのような二つ名が与えられたのだろうか。実は八雲紫にもこの物語において重要な役回りが与えられていたのではなかろうか。それこそ黒幕のような物語の根本に関わる存在である可能性もあるのではなかろうか?

追記

本記事の執筆から約1年経った2026年3月18日現在、『東方智霊奇伝』はサンサーラ編が始まり新展開を見せているが、結局八雲紫が黒幕かどうかは未だ不明である。今はそれどころじゃない展開が続いているが、筆者はまだ八雲紫の黒幕説を諦めていないので、本記事の執筆から増えた根拠や書き漏らしていた根拠などを追記していきたいと思う。なお、この追記より上の本文に関しては、一切書き直しなどはおこなっていない。

根拠6:「地上に瑞霊と霊夢 両方に味方している奴がいる」

迷宮編五巻『怨恨のサブタレイニアン 第七話』において、完全に封鎖された地底から瑞霊を脱出させた犯人をさとりが(聖と瑞霊のキャリーされながら)以下の推理をした。

聖「地底の入り口は外側…… つまり地上側から開けられた跡がありました と言うことは地上に協力者がいるはずです 今の話からそいつは地底の鬼と通じている可能性が高い」

瑞霊「しかし その地上の協力者がいたとしてもそいつはきっとくせ者だぜ 霊夢は神社から逃げて今も行方不明だ まるで私が来ることがわかっていたかのようにな」

さとり「……つまり 地上に瑞霊と霊夢 両方に味方してる奴がいる

この次の回である第八話において、瑞霊の脱獄に協力したのは地底の鬼達──つまり地底から勇儀、地上から萃香が手助けしたことによって瑞霊の脱獄は成功したことが判明する。

しかし、冷静に考えると勇儀も萃香も一切、霊夢の味方をしていない。それでは「地上に瑞霊と霊夢に味方してる奴がいる」という推理と食い違うことになる。さとりの推理が間違っていたのだろうか。

もとを正せば、この推理に行き着いた理由は霊夢と瑞霊がすれ違うように地上と地底を移動しているからである。そして、地上から地底に霊夢を移動させた、霊夢の味方が八雲紫であることは間違いないだろう。

では、瑞霊の味方はどうだろう。瑞霊が地底から地上に移動することを、地上から手助けしたのは先述の通り伊吹萃香である。

ここで一つ疑問が残る。萃香はどこから瑞霊の話を聞きつけたのだろうか。この時、地底は完全封鎖されており、勇儀や瑞霊と連絡を取ることは難しかったはずである。 

それで私が考えたのは、地上から瑞霊を手助けするように、紫が萃香に頼んだのではないか、という説である。

なぜ紫が萃香にそんな頼みをするのかという点についてだが、『東方萃夢想』の描写や『東方求聞史紀』の記述から紫と萃香は友人関係であることが示されており、そういう頼み事ができる間柄であると考えられる。また、迷宮編 『怨恨のサブタレイニアン 第十二話』の瑞霊の人間時代の回想シーンから、萃香には瑞霊を救いたいという気持ちがあったことも推察できる。

では、なぜ紫はわざわざ萃香に頼む必要があったのだろうか? そのことについては次の根拠で述べる。

根拠7:八雲紫の出番が少なすぎる

迷宮編 三巻 『星は何故地の底で輝くのか 第一話』で、フランドールが地霊殿に招集されるシーンにおいて以下のような会話がある。

フランドール「私に用があるって聞いたわよ 探偵さん」

紫「用があるのは私よ 地底までようこそ」

この回から命蓮寺において、瑞霊を地底に封印するための作戦が決行されるのだが、それを考えたのは誰なのかは明らかにされていない。しかし、先述の会話ではフランドールに「用があるのは私よ」と紫が訂正しているため、紫の献策である可能性が高いように思われる。また、旧智霊奇伝 二巻 『幽人、意気妖々に夢を説く 最終話』では、紫の行方をお燐に探らせても判らなかったため、さとりから紫に会いに行くことは難しいことが判る。そのため、紫が作戦を考え、さとりに持ち込んだと考えるのが自然だと思われる。

そして、迷宮編五巻 『怨恨のサブタレイニアン 第五話』から決行されていた、霊夢を地底に侵攻させ、そこで目立ちまくって怨霊から人気を得ることによって力を集め、瑞霊と戦わせる作戦も、紫の考えたものである。そのことについては疑問の余地は無いと思われる。

つまり、迷宮編三巻 『星は何故地の底で輝くのか 第一話』から、迷宮編六巻 『怨恨のサブタレイニアン 第十一話』までの19話の間、紫の考えた作戦の上で話が進んでいたことになる。迷宮編が全33話であることを考えると、その約58%を占める。しかし、『東方智霊奇伝 迷宮編』において紫がそれほど出番があったという印象は無いだろう。それもそのはずで、この19話の間で紫が明確に姿を出していたのは『星は何故地の底で輝くのか 第一話』しかなく、その他の回は殆どが陰陽玉の通信機越しのセリフである。

これほどまでに姿を現さないのにも理由があるのではないかと思い、考えたのが、実は紫は瑞霊から姿を隠しているのではないか、という説である。これは「根拠6」で先述した、紫が萃香に頼んで瑞霊を逃がしてもらったのではないかという説を裏付ける説になる。

つまり、陰陽玉の通信機能を使って霊夢を導いていたのも、わざわざ萃香に瑞霊を脱獄させるように頼んだのも、全て瑞霊に自分が霊夢に協力していることを隠すためにやっているのではないか、ということである。

また、迷宮編六巻 『怨恨のサブタレイニアン 第十一話』でお空に憑依した瑞霊と戦闘を開始する前に、紫は霊夢に以下のようなことを話している。

紫「でも これから起きる事を考えると私は貴方に怒られそうね」

霊夢「あ……?」

紫「反獄王を誘き出すだけならここまでしなくても良かったわけだし 私の代わりに……といえばその通りだし

最後に

『東方智霊奇伝 サンサーラ編』の今の展開を見るに、紫様が黒幕であるかどうかの答えが明確に出るのは、ずっと先のことになりそうだ。しかし、黒幕であるにしろないにしろ(そもそも、黒幕ってどの事件からどの事件までの話なのかすら不明瞭であるが)紫様がこれからの智霊奇伝の話に大きく関わってくる可能性は(願望が多分に含まれているが)とても高いと考えている。それが何ヶ月後か何年後なのかは判らないが気長に待ち続けようと思う(あとさとりももうちょっと頑張って欲しい)

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