東方智霊奇伝の黒幕「八雲紫」説

はじめに

本考察は『東方智霊奇伝 反則探偵さとり』と『東方智霊奇伝 反則探偵さとり 迷宮編』(本文では前者を「旧智霊奇伝」後者を「迷宮編」と表記し、両方の意味が含まれる場合は「智霊奇伝」と表記する)における事件は八雲紫が引き起こしたのではないか、というものである。

明確に正解・不正解がはっきりする考察なのである意味リスキーなものであるが、こういう考察はリアルタイムで追っていた人間にしか出来ないものであるし、外れていたとしても、当時こんな考察をしていたというのが残ればそれはそれで面白いと思ったため、この考察をまとめておこうと考えた。

また、この考察に行き着いたそもそものきっかけは「紫様が怨霊に負けるわけがない」という思いであり、オタクの都合の良い解釈が多々含まれていることにも留意していただきたい。

根拠1:昏睡した状態が誰にも確認されていない

旧智霊奇伝の第一章 第四話・後では瑞霊に憑依され、魔力を貪り尽くされた妖怪(広義)は昏睡状態に陥るということがさとりによって示されている。実際、旧智霊奇伝において瑞霊に憑依された妖怪は、1人を除いて昏睡した状態が確認されている。その除かれた1人こそが八雲紫である。死体が確認されていないのならば被害者だとは断定できないだろう。

それに、被害者だと思われた人物こそが真犯人であった、というオチは様々なミステリ作品で用いられている。

根拠2:瑞霊が憑依した人物で唯一能力が使用できている

これまでに瑞霊は、心を読む程度の能力を持つさとりや、時間を操る程度の能力を持つ咲夜、永遠と須臾を操る程度の能力を持つ輝夜など、有用そうな能力を持つ人物に取憑いてきたが、いずれの能力も用いていない。

また、迷宮編第二章第二話において、にとりに憑依した際に爆発事故を起こすという(仲間の河童が川流れ的なミスと評するほど初歩的な)ミスをしたり、迷宮編第六章第一話の回想シーンにおいてさとりが「恐らくだけど怨霊に操られた奴に大技は使えない」と発言していたことから、瑞霊は憑依した人物の持つ知識や技能を引き継げず、本来の力も出し切れないことが推察できる。

しかし、瑞霊が八雲紫に憑依していたとされる場面においては、境界を操る程度の能力を頻繁に使用している。それも、自身がワープするだけでなく、藍や橙を隙間で冥界に呼び寄せるというような芸当もやってのけている。にとりの知識すらコピーできなかった瑞霊が、紫の能力を使いこなすことができたとはどうしても考えにくいように感じる。

また、永夜抄のキャラ紹介では以下のような記述がある

境界(結界)を操る事がどれだけ危険で強大な力なのかは計り知れない。紫の様なちょっと変わった妖怪か、力の重圧に耐えられる者で無いとその力は扱えないのだ。

物理的に扱えないという意味でなく、責任面の話の可能性もあるが、やはり瑞霊が一朝一夕で扱えるような能力ではないと私は考える。

根拠3:「怨霊の正体と目的を貴方に伝えます」

旧智霊奇伝第二章第六話において紫は「怨霊の正体と目的を貴方に伝えます」という発言をしていた。しかし、どこかおかしくないだろうか?

後の展開を見れば判るようにこの段階では、霊夢に怨霊の正体が宮出口家の者であるという情報が伝えられていないのである。瑞霊の生きていた時代を知らない霊夢でさえ、宮出口の名を聞けば博麗神社に仕えていた家のことだと判るぐらいには宮出口家の存在を認知していた。ましてや、あの紫が宮出口家のことを知らなかったとは考えにくい。紫は意図的に情報を伏せていたのではなかろうか

根拠4:旧智霊奇伝第二章における瑞霊の憑依経路が謎

旧智霊奇伝第二章「幽人、意気妖々に夢を説く」(通称妖々夢編)では4人の人物が瑞霊に憑依されている。その4人とは、前章から瑞霊に憑依されている「霧雨魔理沙」、亡霊の「西行寺幽々子」、悲劇のヒロイン「アリス・マーガトロイド」そして「八雲紫」である。

そしてその憑依順は「魔理沙」→「幽々子」→「アリス」→「紫」であると推察できる。

一応その根拠も述べておく。まず、魔理沙が幽々子の元へ瑞霊を運んだ様子は作中で明確に描写されており、さとりも心を読んでその事実を認識していたため「魔理沙」→「幽々子」については疑いようがない。次に幽々子とアリスの憑依順についてだが、アリスは幽々子が快復した後でも昏睡状態に陥っており、幽々子より先に被害に遭っていたとは考えにくい。よって「幽々子」→「アリス」そして、紫は昏睡状態のアリスの元へ魔理沙を連れて行っており、この時点で瑞霊に憑依された状態でなければ話がおかしくなる。したがって「アリス」→「紫」である。

しかし、このまま「魔理沙」→「幽々子」→「アリス」→「紫」と考えると、幽々子がアリスの元へ瑞霊を運び、その後にアリスが紫に瑞霊を移したというとても奇妙な状態になってしまう。

このことに関して色々考えた結果、実は「魔理沙」→「幽々子」→「魔理沙」→「アリス」→「魔理沙」→「紫」と全て魔理沙が媒介してたのではないか? とまで考えたが、やはりどうあがいても頓珍漢なものになってしまう。

だがここで、紫は実は被害者ではなく黒幕であったとすればどうだろうか? 自分が瑞霊に憑依されていたフリをしていたとすれば?

元祖反則妖怪である紫が偽装工作をしていたとなれば、トリックに関しては最早なんでもありである。それこそ、具体的に何をしたかまで考える必要もないぐらいに。

根拠5:旧智霊奇伝における八雲紫の二つ名

この根拠は少しメタ的であり、他の根拠と比べても一段階ぐらい幻覚度の上がるものである。

以下のリストは旧智霊奇伝における登場人物の二つ名を出演順にまとめたものである。

  • 動けない大図書館(パチュリー)
  • 楽園の探偵巫女(霊夢)
  • 森の魔法探偵(魔理沙)
  • 完全で瀟洒なメイド(咲夜)
  • 紅魔館の門番(美鈴)
  • 究極探偵の助手猫(お燐)
  • 紅魔館の吸血鬼(レミリア)
  • 吸血鬼の破滅的な妹(フラン)
  • 地の底の安楽椅子探偵(さとり)
  • 華胥の亡霊(幽々子)
  • 半人半霊の庭師(妖夢)
  • 探偵と刑事の境界(紫)
  • すきま妖怪の式(藍)
  • すきま妖怪の式の式(橙)
  • 七色の人形使い(アリス)

このリストの濃い字で示した部分に注目して欲しい。全て探偵関連の二つ名になっていることが判ると思う。まず霊夢と魔理沙、お燐、さとりに探偵関連の二つ名が付いている理由はなんとなく推測できる。この4人は智霊奇伝のストーリーに全編通して出演するレギュラーメンバーであるからだ。実際、迷宮編一巻の2~3Pにあるキービジュアル(?)を見てもこの4人がピックアップされていることが判る。

だが、紫はどうだろうか? 旧智霊奇伝の第二章で初登場し、被害者となってからは迷宮編の第五章第一話まで出番は無かったし、その出番以降も殆ど姿を現しておらず、他の4人と比べても出演が少ないと言わざるを得ない。

ならば何故、紫にこのような二つ名が与えられたのだろうか。実は八雲紫にもこの物語において重要な役回りが与えられていたのではなかろうか。それこそ黒幕のような物語の根本に関わる存在である可能性もあるのではなかろうか?

 

 

 

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