「ビンタされる美鈴」とは、『東方智霊奇伝』第1章3話後編(単行本第1巻)に描かれているワンシーンである。
霊夢が紅魔館の庭で倒れている美鈴を発見し、「ぐいっ」と胸倉を掴み上げ、「パン」と頬を平手打ちするが、美鈴は「しーん」となんの反応も示さない。そこに現れたお燐に対し、霊夢は黙って首を横に振る……という場面だ。
パチュリーに続いて第二の犠牲者が出てしまったというシリアスなシーンなのだが、理不尽にも頬を打たれる美鈴や終始無言で展開する絵面のシュールさがただならぬ雰囲気を生み、連載当時多くの東方ファンの心を鷲掴みにした。
博麗霊夢はなぜ紅美鈴をひっぱたいたのか
霊夢はどうして無抵抗の美鈴にビンタを喰らわせたのだろうか。
「相手が妖怪だから」という理由は一見理不尽なようでいて、霊夢の普段のスタンスに鑑みればさほど違和感が無いのも事実である。
しかし今回はあえて、もう一つの可能性を考えてみた。
プロットの悲劇説
東方Projectの公式漫画作品の作り方は、まず原作者のZUN氏がプロットを書き、それを受け取った各作画担当作家が漫画として描き起こすという体制になっている。
これは2023年の「大・東方Project展」で公開された『東方酔蝶華』制作資料などが根拠であるが、どの作品の場合でも大きく変わることはないだろう。
重要なのはそのプロットの体裁である。東方展で見ることのできた資料によれば、ZUN氏のプロットは台詞と状況を書いただけの小説のような文体であり、擬音や効果音の類いまでは細かく指定されていない(『茨歌仙』3巻のオマケ漫画でも効果音の指定は無いと語られている)。つまり今回の例で言うと、「ぐいっ」「パン」「しーん」はZUN氏の指示ではなく、作画担当の銀木犀氏のチョイスであった可能性が高い。
では、このシーンの具体的なプロットとはどのようなものだったのだろうか。
もちろん、過去のイベント等でも『智霊奇伝』のプロットが公開されたことはない。そのため完全な想像になるのだが、例えばこのような内容であった可能性はないだろうか。
「霊夢が倒れている美鈴を発見し、頬を叩いて意識を確認するが、反応は無い」
おわかりいただけただろうか。
この文章ならば霊夢の対応は極自然なものに読め、かつ実際に描かれた絵面とも矛盾しない。
つまりZUN氏が思い浮かべていた擬音は「パン」ではなく、「ペシペシ」だったということがあり得るのではないだろうか。
おわりに
上の内容に根拠は無い。すべてただの想像である。
しいて言うとすれば、この場面のように無言で展開されるシュールギャグ(?)は東方には珍しく、ZUN氏が狙ってこのシーンを指定したとするのに若干の違和感が無くもない……というくらいだろうか。
特に締めの言葉も思いつかない。博麗霊夢の真意やいかに。

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