酔蝶華に見られる魔理沙について

はじめに

『智霊奇伝』では博麗霊夢及び博麗の巫女に関して動きがあり様々な情報が明らかにされましたが、
並行して連載中の『酔蝶華』では、霧雨魔理沙に関する(現段階で)フラグがいくつか散見されます。
主人公の奥野田美宵との関係も示唆されており、酔蝶華は魔理沙に関する新しい動きが見えてくる作品になっているのかもしれないと、自分は見ています。
神主のあとがきにも、魔理沙に注目して欲しいとはっきり書いてあります。
しかし、その割にあまり魔理沙に注目する意見が見受けられず、酔蝶華の深い部分にもっと色んな人が気がついて欲しい、魔理沙に注目する人が増えてほしいという想いから、ここにも挙げようと思いました。
本作からいくつかフラグと取れる部分を挙げつつ、個人的推測も一緒に述べようと思います。

展開がある程度わかりやすくなるように、必要かどうかは微妙ですが各話毎に『不穏度』を設けています。

 

33話『蟹は甲羅に似せて穴を掘る 前編』より

不穏度:★

自分が最初に魔理沙に不穏な雰囲気を感じたのはこの回。

魔理沙は(恐らく)食べ合わせの悪さによって寝込んだ時に、大量に実のなった柿の木の夢を見ました。

霊夢曰く、その夢は「近いうちに誰かが死ぬ縁起の悪い夢」との事。
ただこの夢は、魔理沙と同じルートから食材を手に入れ同じように食べた他の人間も見ていたらしい事から、夢だけでは必ずしも魔理沙に対するフラグとは言えない部分があります。
形だけとは言え、霊夢にお祓いもして貰っています。うやうや…
それでも挙げた理由は他にもあり、この謎は明らかにされていない事(魔理沙の推測で終わった)、次話のとある描写の謎があるからです。
 

34話『蟹は甲羅に似せて穴を掘る 後編』より

不穏度:★★

この回には、実物の柿の木を見上げる魔理沙とそれを陰から見ている謎の大蛇のシーンがあります。

この回に限らず、今後も「蛇」に関する話が出てきます。

寝込む元になった”沢蟹”を売っていた謎の人物の話の中に「蟒蛇(うわばみ)」が登場します。

蟒蛇は大酒呑みとして有名な妖怪です。鈴奈庵のあのおじさん妖怪と同一人物かは不明です。

魔理沙はなにか必死になりながら夢の手がかりを探し、先程の大量に実の生った柿の木を見つけ出したという流れでした。

大蛇や夢、寝込んだ理由については結局謎のままで、魔理沙が御伽話のような形の推測で結論付けてこの話は終わりました。

この話では度々、焦りや不安を感じているような魔理沙の表情を強調して何度も描写されていたのも印象的でした。

 

40話『瓢箪から小魔が出る 後編』より

不穏度:★★★★

『伊吹萃香』の”伊吹瓢“を美宵づてで調査していた魔理沙でしたが、ナタのような刃物を誤って落とした事で床に置いていた瓢箪を真っ二つにしてしまいます。

ここでは、生意気で太々しいはずの魔理沙が珍しくひどく落ち込み、泣き喚くシーンが出てきます。

私はダメな奴」「殺されるべきなんだ」などと自分を過剰に責めるような言葉を喚き散らしていました。

 

41話『木に縁りて鬼を求む 前編』より

不穏度:★★★

伊吹瓢の一連の騒動を経てから魔理沙は、人に見せたがらなかった弱音をポツポツと美宵に吐き出します。

瓢箪について成果が挙げられなかったというよりも、その瓢箪は”ただの瓢箪”であり調べても意味のないものだったのを美宵が報告するまで見破れず、それにより自分の今までの努力に虚無感を覚えたようです。

ここでわかってくるのは、魔理沙は飄々としている風でも内心は不安や焦り、孤独感などが常に付き纏っていると見受けられる事です。

泣き喚いたあのシーンは、それまで抑えていた感情が溢れ出したのだと思われます。

また、『魔法使い』に自分の存在価値を見出す程の憧れの強さも推し量ることができます。

 

42話『木に縁りて鬼を求む 後編』より

不穏度:★★★

前回の落ち込んでいた魔理沙を元気づけるため、美宵は変わった鼠による被害を明かし、魔理沙に本物の伊吹瓢を貸す代わりに半妖の鼠の退治を依頼します。

魔理沙が思いついた鼠退治の方法を美宵に説明しているシーンに、不可解な描写があります。

半妖となった鼠を喰らうのはそれより大きい魔力である

その蛇の力をもって鼠を喰らうんだ

この2つの台詞だけ、何故か黒塗りのおどろおどろしい吹き出しが使われています。

神社の祭事に因んだ、むしろ御利益がありそうな方法の説明に不釣り合いです。

まるで別の意味があるかのような描写です。

半妖の鼠、蛇をそれぞれキャラクターに当て嵌めて考える事が出来そうではないでしょうか?鼠呼ばわりされてるキャラが一人いますよね…。

この描写は今後の展開を予測する鍵になっていると見ています。

また、ここで『伊吹萃香』が魔理沙に接触してきます。

酒呑童子である彼女は魔理沙の企みを元々美宵から聞いており、最初から伊吹瓢を貸すつもりで来ました。

萃香は、鼠退治の完遂を条件に直接魔理沙と取り引きをしました。

 

59話『酒は百薬の長 前編』より

不穏度:★★★★★

人里を漂う不思議なモヤを発見した魔理沙がそれを霊夢に報告するお決まりのパターンのはずですが、いつもと様子が違います。

モヤを見かけた際に魔理沙はしばらく追いかけますが、その表情は冴えません。人にぶつかったり考え込んだり、そのモヤに何か引っかかるものがあるのか「妖怪退治だ!」と浮かれる様子はありません。

霊夢に報告する時も言葉に詰まっていて、あの軽妙な口調は何処かに置いてきたようです。

そのモヤは霊夢にすら見えていなかったようですが、魔理沙以外にも一人だけ目撃していた子がいます。

 

それが美宵です。

モヤの気配を背後に感じた美宵が振り返るとそこには魔理沙がいました。

この辺りの漫画の構図は完全にホラーの導入部分になっています。

鯢呑亭付近でモヤを見かけたという魔理沙の報告に、美宵は暫く真剣に考え込みます。

そしてようやく発した言葉が、

 

それは…由々しき事態ね。あのモヤが見えているなんて…

 

60話『酒は百薬の長 後編』より

不穏度:★★★★

あのモヤは、魔理沙が人間離れしていってる証拠であり、放っておけば魔理沙は乗っ取られ妖怪化していた危険性を孕んでいたそうです。

モヤの正体を解き明かし、魔理沙を救ったのは美宵でした。

伊吹瓢を調べていた事もモヤの原因の一つにあるようです。

美宵からそれとなく説明を受けていた時、魔理沙はずっと不安な表情で何かに怯えているようでした。

魔理沙は、酒と美宵の忘れさせる能力でこの一連の異変の事はすっかり忘れ、モヤも治まったとのこと。

しかし、萃香は魔理沙が妖怪化したとしたら、の事を考えながら不敵に笑う描写があります。

魔理沙が妖怪化したら、霊夢と魔理沙はどうなるでしょうか。

『鈴奈庵』では妖怪化した人間に対して、霊夢が取った行動や具体的な理由が明かされました。

また、霊夢の”監視“の対象には魔理沙も含まれている様子が仄めかされていました。

萃香はそれを知っていて、まるで楽しみにしてるかのように笑っていると読み取れます。

智霊奇伝の事もあり、萃香は何かしら企みがあるように見受けられますが真の狙いは正直予測つきません。

ただ、萃香の狙いを知っているのか、萃香(マミゾウも含まれますが)に向けて八雲紫が忠告をする描写がありました。

幻想郷の賢者である紫からしたら不都合な行動を萃香は起こそうとしているのではないか、と考える事ができます。

 

最後に

他にも沢山ありますが、深く読み取る知恵がないためここまでとします。

他の話でも、やはり魔理沙を中心に話が回っているという印象を受けました。

不穏なフラグが目立ちますが、個人的には魔理沙が堕ちる所まで堕ちるという話にはなり得ないと考えています。

魔理沙が今までの自分と向き合い、一つ成長する話であり、そこに美宵が支えになり関わってくるといったものではないかと予想しています。

理由としては、智霊奇伝では霊夢が一つ成長した姿を見せました。

しかし、酔蝶華でここまでフィーチャーしておきながら霊夢に助けられる話にいくのであれば、魔理沙は結局ただの霊夢の引き立て役でしかないという見方になってしまいます。

つまり、智霊奇伝の霊夢と対比させるのであれば、魔理沙が自身で困難に立ち向かいそれを打ち破る事が重要になります。

魔理沙が壁にぶち当たり、試行錯誤する描写をここまでリアルにはっきり描写したのは酔蝶華だけです。

そこまで力を入れたなら、最後の方で必ず大きな展開が待ち構えている、と自分は見ています。

 

 

 

コメント

  1. 天ぷら より:

    魔理沙がそう簡単に妖怪化はしないだろうけど
    小鈴みたいに変な好奇心と、他の人たちからの噂話を元に単独で調査したり、心の弱さを付け狙われて乗っ取り妖怪化したらえらい事にかねないのが

    • 公太郎 より:

      コメントありがとうございます。
      ご指摘の通り、酔蝶華作中で魔理沙は無謀な行動が目立ち、小鈴のような危うさが見られますね。
      実際に59話で乗っ取られそうになっていたそうですし、神主がいうようにこの辺りは転換点として大事な部分らしいので…