はじめに
はじめまして。夜武栄時雨と申します。
今回は八年ぶりの秘封倶楽部新作「七夕坂夢幻能」の内容と、天空璋との関わりから季節について考察をしてみました。本考察では大まかに分けて2つの考察をしております。
七夕坂夢幻能に関しては、ネタバレがございますのでご注意ください。
注意点
・本考察には「七夕坂夢幻能」のネタバレが含まれています。内容を見たくないという方は内容を見てから本考察に戻ってくることをおすすめします。
・筆者は本考察が初めての考察投稿です。初心者ゆえ不十分な点やおかしな点もあると思いますが温かい目で読んでいただけると幸いです。また感想、アドバイス等コメントしていただければ筆者が跳んで喜びます。
第一章:日本に季節はいくつあるのか
日本には季節はいくつあるだろうか。もちろん、春夏秋冬の四季だろう。そんなことは常識だ。しかし、幻想郷を始め東方についての考察をするとき、我々は常識に囚われてはいけないのだ。
「七夕坂夢幻能」のブックレットにおいて、「秘匿されたフォーシーズンズ」の欄で秘封倶楽部の二人は異界で「隠された5つ目の季節」を見ている。つまり、日本には4つ以上の季節が存在していたのだ。
春夏秋冬以外の季節
ではこの5つ目の季節とはなんだろうか。また、季節が5つ以上あるとするなら、全部でいくつあるのか。
これらの疑問の答えは、「東方天空璋」にある。天空璋6面では、自機たちは隠岐奈によって集めた季節の魔力を吸収され、もといた季節に強制送還されてしまった。そこでEX面では、自機たちは背中の季節をどの季節でもない季節の境目「土用」にして摩多羅隠岐奈に対抗した。
天空璋において土用は妖精など自然と関わりが深いらしく、
それぞれの季節と季節の間には、春夏秋冬のどの季節にも属さない瞬間というのがある。その瞬間は自然の力が衰え、精神が生命を凌駕するのだ。
(日焼けしたチルノルートEX面会話より)
と言われている。精神力と生命力は二童子にも見られるように生命の存続において核となる要素である。
また土用は
四季の生命力がもっとも失われ、この世の魔が顕れる季節の隙間
(射命丸文ルートEX面会話より)
ともいわれている。
土用は各季節の間にあり、春夏間の春土用、夏秋間の夏土用、秋冬間の秋土用、冬春間の冬土用の4つがある。
したがって、それぞれの土用を一つの季節と捉えるならば、日本には春夏秋冬の四季に加えこれら4つの土用を合わせた八つの季節があるということになる。
第二章:秘封倶楽部がみた五つ目の季節は土用なのか
ここまで春夏秋冬以外の季節を考えるために天空璋からヒントを得て「土用」という存在に着目してきた。しかし蓮子とメリーが見た五つ目の季節は果たして土用なのだろうか。
二人が異界で五つ目の季節を目の当たりにしたのは、ブックレットによると「メリーが音信不通になってから二週間は経とうとしていた」頃だったようだ。
この時蓮子はメリーの家を捜索しており、その日のうちかその次の日に「特急ひたち」にのってメリー捜索のために七夕坂に行っていたと仮定しよう。また異界での時間の流れが不明なため、蓮子が七夕坂に到着し地蔵をひっくり返した日と、秘封倶楽部が異界で五つ目の季節を見た日は同じ日であるとする。
メリーが七夕坂にいたのは7月7日であることは作中でも明確に記されており、そこから二週間後であるから、蓮子が七夕坂に行ったのは7月21日前後であると考えられる。
そして肝心なのはこの日が土用であるかどうかだ。土用は4つあるが、時期的に可能性がありそうなのは夏土用である。
夏土用は年にもよるが、7/19~8/7あたりの期間である事が多い。つまり、二人が異界に入った日と夏土用は合致している。これらのことから、二人が見た五つ目の季節とは、夏でも秋でもない季節___夏土用だったと考えられる。
また異界についてだが、作中で蓮子が五つ目の季節を形容する際、
目を閉じると黄金に輝く大地が視える
空一面には沢山の不思議への扉が視える(七夕坂夢幻能ブックレット「秘匿されたフォーシーズンズ」より)
とあることから、五つ目の季節はきらびやかな景色であるとともに、空に「沢山の不思議への扉」があるため、天空璋のステージにもなった後戸空間こそが二人が行った異界だろう。そしてまさにこれが少女が見た日本の原風景かもしれない。
第三章:「秘匿されたフォーシーズンズ」とは
さて、ここからは摩多羅隠岐奈のテーマ曲である「秘神マターラ~Hidden Star in All Seasons. 」と「秘匿されたフォーシーズンズ」について考えていこう。
第一章で述べたように、日本には八つの季節があると考えられる。そのことを踏まえると「秘神マターラ~Hidden Star in All Seasons. 」の「All Seasons」とは八つの季節を含むことになる。星が隠されたのは決して四季だけではなかったのだ。
そして隠岐奈にはもう一つテーマ曲がある。ご存知の通り「秘匿されたフォーシーズンズ」だ。この曲は天空璋と七夕坂夢幻能の両方に収録されている。
天空璋では六面において自機たちが集めた季節の力が秘神である隠岐奈に吸収されてしまう(=秘匿されている)のだが、この時「秘匿された」季節は春夏秋冬の四季だと考えて問題ない。つまり天空璋の「秘匿されたフォーシーズンズ」が意味するフォーシーズンズは春夏秋冬である。
天空璋と七夕坂夢幻能の違い
しかし、「七夕坂夢幻能」の場合はどうだろう。本作品では、夏以外の3つの季節については特に触れられていない。むしろ第二章で考察したように焦点が当てられているのは「土用」の方だろう。
ブックレットでは五つ目の季節について
隠されていた五つ目の季節が現れる
完全に失われていたこの世の姿が蘇る
この国のタブーが、いま破られたのだ!
(七夕坂夢幻能ブックレット「秘匿されたフォーシーズンズ」より)
と書かれている。つまり夏土用をはじめとした季節としての土用が「タブー」であるとされているのだ。そう考えると、この「秘匿されたフォーシーズンズ」という曲名も天空璋と変わって聞こえる。
何が言いたいかというと七夕坂夢幻能では「秘匿されたフォーシーズンズ」=「春夏秋冬以外の四季」だということだ。
秘封において東方からのアレンジ曲が収録された時、曲名や曲そのものの解釈が変わることが往々にしてあるが、今回も例に漏れずそのパターンだと考えられる。このような考察の仕方も、ZUN製の幻想作品の楽しみ方の一つではなかろうか。
おわりに
本考察では秘封倶楽部が見た五つ目の季節についてと隠岐奈のテーマ曲である二曲のタイトルについて考察を行った。結果的になかなかの長文になってしまったが、少しでも私の考察から幻想を拓く刺激を受けてもらえたら光栄だ。
ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
それではよい幻想ライフを!
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