※メタ要素が含まれた考察になっています。
錦上京の本編ストーリーは深い悲しみを感じさせるものだった。
聖域に昔から棲む登場キャラクターの殆どがボロボロの服装で外部との関係を断ち、極め付けはラストを飾る阿梨夜も骨組みやツギハギだらけの見た目で、月の行いにより在り方を都合よく変えさせられ、テーマ曲も相まって既に諦念のようなものを抱き哀れみに満ちている。
月の民である豊姫を除き、そんな中でも全てに当てはまらないキャラクターがいる。
道神馴子と渡里ニナである。
月の民に干渉されておらず、人懐っこく生き生きとしていてなんとも楽しそうなのである。
美しい衣装に身を包み、生まれたばかりの若さを感じさせるのだ。
馴子はチミによって創られ時を経て自我に目覚め、ユイマンと阿梨夜の施設の情報によりニナは化石から妖怪として生まれた。
古くから在る存在から生まれたという共通点がある。
また、馴子は体験版における最後のキャラクター、ニナはExボスという作品の〆として登場する。
生まれたばかりで危なっかしさもあり、不安定な存在を最後に据えているのである。
ここには、作者であるZUN(神主)の深いメッセージ性が込められているように感じる。
神主は以前、「錦上京はExまでやって欲しい」という言及をしていた。本編が悲しみを感じるために、最後にハチャメチャなキャラクターと対峙して楽しく終わらせようという意図があるらしい。
そんなExボスであるニナは、陰謀論に塗れ、得た情報が真実だと信じて疑わない色んな意味でだいぶぶっ飛んだキャラクターとして登場した。
ただ、主人公達の説得によって割とすんなり考えを改め、自分を見つめ直す意志を見せている。
染まりやすくはあるが、すぐに考えを改め行動に移そうとする柔軟さから若さを感じさせる。
錦上京は我々ファンや、創作の世界へのメタファーを感じさせるものがいくつかあり、作品から神主のメッセージを読み取る事ができる。
今回のニナも同様で、上記に挙げた例から若いファン層及び若い創作活動者の表象ではないかと個人的に思っている。
今はネットで有名な二次創作やネタといった表面的な事しか知らないが、実際に知らないものと関わっていく事で、自分の新しい可能性に気付けるというのを我々に示しているのではないか、とだいぶ希望的観測をしてみる。
古参ファン、懐古ファンで若い衆を煙たがる者もいる上、新規層には流行りに乗ってすぐに消えていく者も少なくはない。
情報から生まれた者はニナ以外にもいたかもしれない。しかし、ニナは主人公と関わったことで幻想郷の更に奥深くを理解しようという考え方に変わっていった。
新規層の中にも、東方と向き合い奥深さに気づき、熱心なファンになる者もいるのではないか、そんな可能性に満ちた新規を一緒くたに排除しようとせずという、神主の一抹の望みが渡里ニナというキャラクターで表された、というのが自分の考えである。
渡里(わたり)というのも、古い層から新しい層へ東方の面白さを伝え”橋渡しする”ことを望んでいるようにも思えてくる。
神主は最後に、東方や創作世界のこれからを担うだろう若い衆へ意志が受け継がれる形で、自らが望む在り方を見せて作品を終わらせたのだと考える。

コメント
蜃気楼、ハルシネーションは創作活動における自ら作り上げた作品、または幻視した二次創作という意味も籠ってそうで、創作者のイメージはニナの蜃気楼を作るという所から考えました。