物部布都。
複数の媒体で出番を持つ彼女であるが、いずれにおいても皿を投げ割る攻撃手法を主流とする。
なぜ彼女は皿を割るのか。その意味について考えていこうと思う。
布都の依代
「東方求聞口授」により、物部布都が尸解仙であることが示されている。
尸解仙とは肉体を捨て依代に魂を宿らせ、後ほど依代を新しい身体として変化させることで復活する手法をとった仙人のことである。
この手法において、布都は依代に皿を使ったことがわかっており、これが特に心綺楼以降の作品にて皿との関連の深い描写がされることの理由と思われる。
また、なぜ依代に皿を使ったのかについては、彼女がスペルカードとしても使用する「物部の八十平瓮」にあやかったものと考えられる。
八十平瓮とは物部氏の祖とされる伊香色雄命(いかがしこおのみこと)が、天皇に命じられ神への供物として作った大量の皿のことである。
尸解仙は依代にしたものによってランクが決まるため、布都が自らの氏族のルーツに関わる皿を依代に選択したことは自然であるように思われる。
蠱毒
なぜここで蠱毒?と思われる方もいるかもしれない。
東方Projectにおいて蠱毒と聞いて印象深いのは姫虫百々世であるが、実は布都も蠱毒に関連したキャラクターである。
「東方心綺楼」において、布都は皿を割るごとに技が強化される、という特技を持ち、この特技の名前を「蠱毒皿の積重」という。
蠱毒とは壺中などであらゆる毒蟲を殺し合わせ、最後に残った一匹が最強の毒を有するとされる古代中国の呪術である。
この蠱毒という呪術儀式において、平らな器である皿は一見かみ合わないように見える。
だが、実はこの「蠱毒皿」というのは蟲を入れるための器を指すのでは、ない。
同族殺し
布都は自分の氏族である物部宗家を自分の謀略によって滅亡に追いやっている。
氏が滅ぶ、ということはつまり布都が最後の生き残り、ということだ。
言い換えると、布都は自分の氏族で蠱毒の儀式を(意図してかどうかは不明だが)実行している。
蟲を物部一族としたとき、最後に生き残った蟲が布都であり、つまりは布都が一族最強、ということになる。
蠱毒皿の積重
ここで今まで上げつらった内容をまとめる。
- 物部布都は皿である。
- 物部一族は八十平瓮にルーツを持つ。
- 布都は物部一族で蠱毒の儀式を実行している。
これらを総合して考えたとき、「皿を割る」ということは何を意味すると考えられるか。
それは「物部一族を手にかける」ことのメタファーに他ならない。
布都は皿であり、皿が皿を割るということは同族を殺す、ということである。
また、氏族が皿にルーツを持っているという点においても、物部を皿とみなすことができる。
つまり、皿を割る儀式を実行する、ということは自分がかつて行った同族殺しを儀式化し、皿に置き換えてなぞり返す、ということなのだ。
このとき、「蠱毒皿」における皿は蟲を入れる器を指すのではなく、蟲そのものを指している、ということになるだろう。
「皿を割ることそのものが蠱毒の儀式」であるとしたとき、「東方心綺楼」の物部布都が皿を割れば割るほど強くなるのは自明である。
よって、「物部布都が皿を割る理由」は「同族殺しを儀式にて再現するため」、と結論付けることができる。
80枚
「東方心綺楼」においての布都の最大強化段階は皿を80枚以上割った状態であり、これが布都の最強状態である。
この上限が80であることにも意味があると思われる。
まず、八十平瓮が「八十」の平瓮であること。
あるいは、大量に分かれた分家筋の総称である「物部八十氏」の「八十」から、と思われよう。
いずれも実際にきっかり80枚や80支族であったとは限らないが、古来より、八はたくさん、のような意味を持つために八十の値が当たっているものと考えられ、ルーツをもつ数字を儀式に用いるのは自然な形であろう。
あるいは単に、八十がとてもたくさん、という意味を持つことそのものが80枚のボーダーラインを生み出していると考えることもできる。
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